国内起債市場を斬る 起債評価:2/12~2/16

月曜日が祝日であると、起債市場での募集は最大でも3営業日に限られる。しかし、日銀による金融緩和の見直しの動きが意識される中では、なかなか募集に踏み切るのが難しいのが現実だったようだ。投資家は金利水準が上昇してから債券を購入したいと考えており、年度内の資金消化について焦って取組む姿勢を見せていない。発行体は金利上昇前に必要な資金を調達しておきたいと考えるだろうが、そもそも企業が一般的には金余り気味であることもあって、市場があまり盛り上がらない。年度末に向けての起債観測は色々と見られており、当面は、安定的な募集ペースが実現されるものと予想できる。

楽天グループの発表した2023年12月期の2千億円を越える赤字決算が、クレジット市場での一つの注目となっている。基本的にモバイル関連の設備負担コストが大きいためではあるが、1月末に発表した18億ドルの3年債はクーポンが11.25%であり、アンダーパー発行分を考慮した利回りは12.125%にまで上昇するという。S&Pの格付がBB格であることからすれば、違和感の小さい水準かもしれないが、その後のセカンダリーマーケットでは10%を上回る程度の利回りになっているようである。資金繰りに対する懸念を払拭するためとは言え、巨額の利払いを負担した発行であった。すぐに円債市場への影響はないと思われるが、根強く懸念されている楽天のモバイル事業が新しくプラチナバンド(700MHz帯から900MHz帯を、「プラチナバンド」と称す。プラチナバンドは携帯電話がつながりやすい周波数帯。低周波数のため、障害物があっても他の周波数帯より電波が入りやすい。少ない基地局でエリア全体をカバーできる。送受信できる情報量は他の周波数帯よりも少ない。)を利用できるようになって評価が変わるのか、それとも、引き続き赤字を垂れ流すのか。万一の場合も、通信事業に関しては破綻より別の事業者等に事業を取得させる可能性が高い。しかし、それ以外の小売プラットフォームや銀行、証券、保険等金融関連以外にも様々なサービスを主としてネットで提供しており、今後の推移からは目が離せない。

この週の社債等の起債としては、丸紅の10年債180億円、伊藤園の5年債100億円、首都高速道路の4年債300億円といった顔触れであり、首都高速道路債のみがソーシャルボンドとなっている。もっともこの週は、財務省が世界初となる10年物のクライメート・トランジション利付国債8,000億円を入札形式で募集している。応募倍率は3倍近い水準であったが、2月頭に募集された通常の10年利付国債の応募倍率よりも低い。グリーニアムの発生によって割高に購入することを忌避した投資家が少なくなかったものとも考えられるが、実際に観測されたグリーニアムは、わずか1bpに留まった。昨秋に募集されたグリーン共同発行市場公募地方債のグリーニアムが2bpsであったことを考えると、初物にしては小さいと言って良いだろう。グリーン共同発行市場公募地方債の募集額が500億円と小さかったことがこの差の原因だろうか。なお、その後の流通市場では、クライメート・トランジション利付国債のグリーニアムはほぼ消失しており、国債としての評価のみに留まっているようだ。来年度以降も追加発行が予定されており、今後の市場での人気の有無が注目される。

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