国内起債市場を斬る 起債評価:5/20~5/24

起債市場は、金利の先行きを意識しながらも、活況を呈している。週後半には10年国債指標銘柄の利回りが1.0%を上回るなど、為替の動向や政府の思惑もあって、株価以上に金利の居所が注視される。資金調達を行う発行体側から見れば、金利が上昇する前に調達したい。しかし、購入者である投資家側は、金利が上昇するなら水準が上昇してから購入したい。ところが、買いたいときに買えないのが日本の一般債であることは、誰しも知っている。流動性の高い国債の一部を除くと、購入希望があっても買えない可能性がある。そのため、新発債を着実に購入することが重要になる。新発債のスプレッドが、一般的にセカンダリー・マーケットで観測されるスプレッドよりタイトになるのは、こういった市場構造もその一因となっている。近年は、流通市場での出来値の多くが日本証券業協会より公表されており、以前より流通市場での価格が認識しやすくなっている。また、公社債店頭売買参考統計値については、社債等の全取引情報が日証協に報告されており、出来値と大きく乖離した場合には状況が確認されることから精度が増しており、利用価値は向上している。

現時点の社債発行市場では、総じて投資家の需要が大きいため、スプレッドがタイトな水準を維持しており、募集される社債等の額が多くても消化に支障はないようである。この週もソフトバンクの2本立て800億円の募集から始まり、財投機関債が複数募集され、週末の木曜と金曜には、ノンバンクだけでなく、電力・ガス、鉄道・陸運、不動産といった様々な業種による起債が見られている。メーカーによる起債は、もう少し後になるかと思われるが、陸運のニッコンホールディングス(9072)のようにフリークエントイシュアーではない企業も社債を募集しており、メーカーによる起債観測も幾つか確認されている。次の週辺りには、発行体の顔触れがもう少し多様化するものと期待される。

このような起債市場では、SDGs債の募集が花盛りである。翌週にクライメートトランジション国債(本年2月14日「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」、所謂「クライメート・トランジション(移行)利付国債」の(8000億千)入札を実施)の入札が予定されており、その前にというタイミングが意識されたこともあろう。SDGs債の形態としても、様々なものが見られている。グリーンボンドとしては、国際協力銀行の5年債100億円、中日本高速道路の5年債600億円、東海旅客鉄道の20年債100億円、三井不動産の10年債300億円と圧倒的に数が多い。そのこともあって、グリーニアムといった表現が使われているのだろう。その他にも、ソーシャルボンドとして日本学生支援機構の2年債300億円があり、サステナビリティリンクボンドとしてJA三井リースの5年債300億円が募集されている。日本では国債も含めて多く募集され独自の形態へ進化しつつあるトランジションボンドとしては、中国電力の5年債100億円が募集されており、同時に募集された10年債160億円はトランジションリンクボンドとされている。また、大阪瓦斯の3本建ての起債の中で10年債250億円のみがトランジション・リンク・ボンドである。このように、相変わらずSDGs債が花盛りであるが、既発のクライメートトランジション国債のグリーニアム水準が2月(2月は金融機関から2兆3,212億円の応札、応札倍率は2.9倍、予想よりも弱めの入札となり落札利回りは0.74%、直前の市場予想は0.68%。)の入札当時より大きくなっているようであり、次の入札や今後の状況が注目されるところである。

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