3月期決算企業の株主総会シーズンに入ったため、起債市場の動きは乏しい。ヘッドラインリスクがあり、また、企業側も株主総会への対応に追われているため、起債に動く余裕がないということのようだが、実際には、3月期決算以外の企業もあまり動きを見せない。引受証券会社の事情ということも考え難いし、もっとこのタイミングを積極的に利用する発行体が見られても良いのではと考える。少なくとも起債ラッシュの際に多くの案件に埋もれるよりも、この閑散期に起債した方が市場の注目を浴び易く、円滑な募集にもつながることもある。もっとも発行体側には、注目されない方が良いという「ことなかれ主義」が蔓延しているのかもしれない。
実際の社債等の募集案件を見ると、決算期に捉われない公的セクターの募集のみであった。日本高速道路保有・債務返済機構が、5年債200億円及び20年債150億円のソーシャルボンドを募集している。この発行体は通常の財投機関債の募集に少し飽きているようで、数年前までは利払満期時一括払いといった仕組みを常用していたし、時には、10年や20年などの社債等が多く募集される整った年限以外での債券募集も行っていた。最近のお気に入りはソーシャルボンドのようである。考えると容易に理解できるように、地方公共団体をはじめ、財投機関債を募集するような公的セクターに属する発行体は、自らの存在意義からソーシャルボンドの募集には馴染みやすい。
国際協力機構のように、単なるソーシャルボンドでは注目が集まらないからと、更にジェンダーボンドなど細かいラベルを付しているものもあるが、依拠するガイドラインからもカテゴリーとしてはソーシャルボンドに過ぎない。前向きに解釈すれば、珍しいラベルを付すことで債券の購入者である投資家とともにWin-Winの状況を作っていると考えられる。しかし、否定的に考えるならば、話題作りの「売らんかな」債券発行とも云える。同機構による個性的なラベルのほとんどが、単発の債券募集でしか使われず繰り返されていないことを見ると、どうも後者の否定的な見方が的を射ているのではなかろうか。
SDGs債に関して、地方公共団体がグリーンボンドの共同発行を準備していることが報道されている。以前から総務省地方債課などが検討していることは漏れ伝わっており、いよいよ今夏以降に具体的な募集に向かって動き出すようである。地方公共団体はソーシャルボンドの認定を得て募集することは容易であるが、グリーンボンドに関しては、少しハードルが高い。名ばかりのグリーンボンドとならないよう、背後のプロジェクト案件に関する的確な情報開示を望みたい。しかし、ゼネラルモーゲージの枠組みを求められている日本の地方債において、グリーンボンドのようなレベニュー債的な発想が馴染むのかどうか、法的にも枠組みとしても、十分な検討の余地がある。