国内起債市場を斬る 起債評価:4/2~4/6

2018年度の起債市場の幕開けである。当然のように、10年長期国債の入札から10年物市場公募地方債と進んで、それから財投機関債や民間の社債の募集となる。もっとも現在では、市場公募地方債も個別に条件が決定されるために、10年債だけを取っても、募集は2週間程度で分散して行われる。社債や財投機関債は、さらに、日程が区々である。もっとも、近年は休み明け直ぐを避け、追い詰められたかのような金曜日の募集が多く見られている。実際のところ、募集に関しては当日の午前中にはほぼ終わっているだろうから、すっきりして週末を迎えられるということだろう。

今年度の頭は、いつもの顔触れと言って良いだろう。財投機関、電力、ノンバンクに商社と鉄道が加わって、業種としてはお馴染みのところである。財投機関債は、日本政策投資銀行の3年・5年・10年の三本立てに、住宅金融支援機構の5年・10年・20年の三本立てが募集されている。前者は合計900億円、後者は合計700億円で、二つの発行体だけで系1,600億円を募集したのである。もっとも日本政策投資銀行は3年債200億円と5年債400億円、住宅金融支援機構は5年債500億円で、中短起債のウェイトが大きく、市場を荒らすような展開とはならなかった。

電力債は、中国電力10年、北海道電力10年・20年、北陸電力20年と発行体3社が募集したものの、金額は合計でも700億円に留まっている。月央にも東京電力パワーグリッドの起債観測があるようで、投資家は無理して購入していないようだ。結果的に、割高感のあるタイトなスプレッドとなった中国電力の10年債は苦戦したようである。どうも10年債が苦戦する傾向にあるのは、住友商事の売行きでも同様である。住友商事は今回の起債が第55回債と決してフリークエントイシュアーではないのでレアモノ、グッドネームを期待するところだが、利回りが思わしくないと年度初めだからといって、投資家が飛びつくようなことにならない。

相変わらず売行きの良いのが、20年債であることは言うまでもない。北海道電力のクーポンが0.754%、西日本鉄道が0.753%と、10年債0.3~0.4%程度のクーポン対比では倍近い。年間の利息収入を確保するという目的からは、早いタイミングで高いクーポンの債券を買うのが手っ取り早い。しかも、電力や鉄道といった信用リスクが低く安定していると考えられる業種の債券は、より魅力的である。どうやら今年度も、日銀オペ見合いの3年債と超長期債が良好な売行きとなる「ダンベル市場」の可能性が高そうだ。

国内起債市場を斬る 年度初特別号:2018年度の起債環境は

平成30年度である。しかし、予定ではその次の年度は途中で平成31年度から新元号の元年度に変わるために、頭の切替えが求められることになる。官庁では元号の使用が一般的であるが、民間での使用は強制されるものでもない。有名な元号法の文言を見ても、条文は「元号は、政令で定める。元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」の二つしかない。若者を中心に元号離れが進むのではないか。特に、新しい元号は、次代の天皇陛下がよほど長く公務を取られない限り、平成を大きく越えることにならないのではないか。30年程度の元号が数代続くならば、元号の使用は敬遠されるだろう。

とりあえず、日銀の新執行部を現政権が指名し国会の承認を経たため、金融政策は当面変更がないものと期待される。米FRBは利上げを実施しているものの、長期金利への大きな影響はない。仮に米長期金利が上昇して円安が進めば、日本も金利上昇へと誘導する可能性がわずかにある。しかし、円安は輸入物価上昇を通じて、物価全般の水準を押し上げる可能性がある。そういう意味では、輸出の低迷から企業業績を圧迫しない限り、金融緩和は継続されるだろう。つまり、中東や極東の政治的な混乱による金融市場の変動がない限り、金利の上昇は期待し難いのではないか。

加えて、信用スプレッドの変化もなかなか難しそうである。企業業績は一般的に良好であり、賃金の上昇は限界的であり、その他の物価も不動産路線価格の一部を除いては安定的である。企業収益を押し下げる要素はなかなか見当たらない。東京オリンピック前に建設や不動産がボトルネックに陥る可能性がないとは言えないが、中国マネーの撤退などがあったとしても、信用スプレッドの大幅な拡大に繋がるインパクトがあるとは思えない。規制の変更や資源の枯渇といった外部環境の変化も想定される範囲にはない。

当面、金利先高感がないので、起債が殺到することもないだろうし、投資家も淡々としたスタンスでの社債購入を続けるのではないか。無理して買い急ぐ構造にはないし、タイトなスプレッドの社債を敢えて購入する必要もないだろう。もっとも安倍政権が崩壊した場合に、政府からの支援を失った日銀執行部がどのように判断するかは見物であるが。景気が回復しても失速しても、金利や信用スプレッドの変化を期待できないというところに、日本経済の根深い病根があるようにも思える。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/19~3/23

前週、某紙に報じられたように、今年最後の社債募集は20日のSBIホールディングスによる3年債と5年債の2本立てとなった。近年の年度末最後の社債募集を見ると、2017年3月は15日の大王製紙・東京建物・名古屋銀行(劣後)であったし、2016年3月は11日のサッポロホールディングス・三井不動産・SBIホールディングスといった顔触れであった。SBIホールディングスは、2年前も年度内最後の起債を行っていたのだが、11日と20日ではまったく日程が異なる。ちなみに、2015年3月は13日のオリエンタルランド、2014年3月は19日の光通信・タカタと今年と同じくらいのギリギリ起債であった。しかし、後に破綻したタカタの名前がこのようなところで上がって来るのは、意味深であるのかもしれない。

2016年3月にSBIホールディングスが募集したのは、第7回3年債150億円であった。今回は第13回3年債180億円と第14回5年債180億円である。格付けは、2016年当時からR&IのBBB格であったが、クーポンがまったく異なることに驚かされる。第7回3年債は1.1%クーポンと、現在ではまったく考えがたいような水準である。今年募集された社債のクーポンは、3年債が0.45%と半分以下で、5年債ですら0.7%である。既にマイナス金利政策による影響があった時期であるから、ベースとなる金利水準自体の変化ではなく、SBIホールディングスに対する投資家の信頼度アップや利回りを求める姿勢の強さ等が反映されたものであると考えられる。今回の起債に際しても、両年限100億円程度の募集予定が各180億円まで積み上がっており、投資家の購入ニーズの強さを反映しているのである。

年度内の起債は終わりを告げた。引き続き株価は不安定さを見せているものの、リスクオフ展開の影響から10年国債利回りは低下気味にある。期間収益を意識する投資家は新年度入りして早々の社債購入を希望する可能性もあるが、低過ぎる利回り水準を嫌気して、国内クレジット投資から手を引いてしまう可能性もある。金利水準次第では、新年度の投資家の社債購入姿勢は、大きく変化するだろう。特に、米国の利上げ見通しと株価の状況次第で、日本の社債か米国の社債かを選択する可能性があり、為替や周辺市場からも目が話せない展開になるものと考えられる。既に幾つかの銘柄の起債観測が確認されており、ブラック企業や事業会社の劣後債とかも名前が上がっているようだ。4月の10年長期国債の入札は3日の火曜日に予定されており、早ければ第一週から起債に向けた動きが高まることだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/12~3/16

どうやら今年末は、いつまでも社債の募集は終息しないようだ。16日が最後の募集日になるかと思われたが、この日に募集された社債の払込日は23日か26日であり、月内払い込みの「駆け込み起債」という意味では、まだ数日の余裕は残っている。20日に募集するという起債観測も上がっており、なかなか年度末とならない。既に某起債評価の年度内ノミネートは締切られており、これらの起債は対象外になってしまうものと思われる。

12日からはじまる週の債券募集はサムライ債等があり、16日の金曜日になって、社債の募集が行われる展開となった。しかも、野村総合研究所は、円建ての10年債と同時に、オーストラリアドル建ての5年債も募集している。短中期の募集は日産フィナンシャルサービスの3年債250億円及び5年債150億円、光通信の5年債といった顔触れが並んだ。長期債では、野村総合研究所の10年債200億円に住友倉庫の7年債50億円があった。そして、超長期債が、光通信の15年債400億円及び住友倉庫の20年債100億円である。

これらの中でもっとも売行きの良かったのが、光通信の15年債だっただろう。100億円程度の発行予定で募集が開始された後で、最終的には400億円の発行となったのである。そもそも光通信の格付けは、R&IのBBB+格及びJCRのA-格であり、過去の買入償却事件や業績の大幅な変動もあって、超長期の与信に耐えられる銘柄とは考え難い。それでも投資家の人気が集まったのは、1.79%という高いクーポンである。8日に募集された三菱地所の40年債のクーポンは1.313%であり、それよりも40bps以上高い利回りだったのである。三菱地所の40年債でさえ、不動産に対する40年の与信が懸念されるところであるが、光通信への15年の与信も決して安全とは思えない。投資家の尺度は、目先の絶対水準に惑わされて、「背に腹」の判断を下さざるを得ない状況に変わりつつあるのかもしれない。

その他の起債についても、総じて順調な販売状況であった。投資家も年度内の募集が残り少ないことを認識しており、資金消化と利回り確保とのバランスを考えざるを得ない。金利の先高感がない中では慎重に案件を見極めて行くしかないが、債券の保有期間というタイムホライズンを意識して発行体や業種を評価しないと、現状がいつまでも続くことはない。物価は、日銀が引上げようとしても上がっていないし、金利は日銀の強いコントロール下にある。これらの動きが変われば、物価が上がって、日銀が金利操作を放棄することも予想できる。それが、何年後に来るか誰も計ることはできないが、投資家の保有する債券の価値が激変することは、間違いないのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:3/5~3/9

いよいよ社債等の募集される日も、年度内残りがわずかになっている。普通に考えても、3月12日からはじまる週が最後であると考えられる。それでも、まだ起債観測の上がっているものが複数あり、金曜日の16日まで募集が散発される可能性が高い。投資家としても引受証券会社としても、分散するのは歓迎であろう。

既に3月5日からはじまった週でも、債券の募集はパラパラといった感じである。特に、日銀の金融政策決定会合を意識したということはなく、むしろ慌てて起債する発行体が少なく、投資家も年度末が迫ったからといって、社債等に対する投資スタンスが変わるものでもない。メーカーの起債が本数として目立つ中、圧倒的な人気で消化されたのが、不動産銘柄であった。

まず、6日に野村不動産ホールディングスが40年及び42年の劣後債を募集している。いわゆるハイブリッド証券と呼ばれるものである。格付けは劣後性を反映して、R&IのBBB格とJCRのBBB+格である。一般的にBBBゾーンの普通社債で超長期年限のものを購入する投資家はいないだろう。それが、ハイブリッド証券などという美名を付されると、手を出してしまうのが一部の投資家の浅はかなところである。確かに、40年債は10年経過後に、42年債は12年経過後に期限前償還条項が付されており、発行体がコールオプションを有している。クーポンのステップアップ幅は、いずれも100bpsである。ハイブリットなのは発行体であって、10年や12年経過した時に、金利水準そのものがどうなっているのかというリスクを、どう捉えるかである。

また、不動産業界や野村不動産ホールディングスの状況がどうなっているだろか。いずれにせよ、これらの劣後債を単純な10年債や12年債と考えて投資するのは誤りである。金融庁によって期限前償還を監視されている金融機関とは異なり、事業会社の場合には、平気で、経済合理性の観点から期限前償還の適否を判断するだろう。仮にまったく期限前償還されなかった場合、不動産会社の社債に対する40年や42年の投資は正気の沙汰でないだろう。1980年代に不動産を含むバブル経済が膨れ上がったのは、30年ちょっと前のことでしかない。40年も先のことを見通せる業界ではないだろう。

そういう意味では、8日に募集された三菱地所の40年債も悩ましい存在である。野村不動産ホールディングスの40年物劣後債は、当初10年のクーポンが1.3%であった。一方、三菱地所の40年債はシニア債であるものの、クーポンは1.313%である。野村不動産ホールディングスの劣後債は、クーポンのステップアップが予定されており、一方で、10年経過時点以降に早期償還される可能性がある。劣後債であるから、当然、発行体の破綻時には債務の回収可能性が低い。三菱地所の40年債はシニアであるから、元本は優先的に回収できる。しかし、40年間のクーポンはフラットである。丸の内の大家と呼ばれる同社に関しては、信用力の低下を懸念する必要性は小さいかもしれないが、南海トラフや東京直下型での地震発生を考えると、今後40年間で大きな損害を受ける可能性は小さくない。やはり不動産会社に対する40年とかの与信については、より慎重に考えるべきではなかろうか。安易に現在のクーポンの絶対水準だけを見て投資を行うと、将来のファンドマネージャーが涙することは必至であろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/26~3/2

機関投資家向けに募集される新発債券の一般的な条件決定は、3月中旬までである。したがって、2017年度の起債市場もあと10日程度といったところだろうか。既に市場関係者のところには、起債評価機関から年度の起債評価に関するアンケート用紙が届いていることだろう。もっとも近年は、用紙というよりも投票様式だったり、オンラインの入力案内だったりといった形態であるようだ。

基本的に、日銀によるイールドカーブコントロールが続いて、多少長期金利が動いたものの、概ね金利水準はコントロール下にあったと言って良い。加えて、日銀はしつこく3年以内の社債買入を実施しているのだから、極端な格下げ銘柄や経営不安銘柄を除いて、社債のスプレッドが拡大することも考え難い。こうなると、起債に関する評価は売れたか売れなかったかという要素よりも、起債運営が適切に行われていたか、セカンダリーの実勢を発行条件に反映していたか、といった要素の色が濃くなる。債券が投資家に売れて当然な市場環境だからである。2月23日のように、募集された社債がいずれも苦戦したというのはレアな日であり、金利の変動についても、本来はスプレッドプライシングで対応できるはずのものである。日銀によるマイナス金利の導入でスプレッドプライシングの機能が低下している年限であれば、金利水準の変動が激しい状態に陥ると、債券の値決めが容易でなくなる。日銀は機能低下を否定するが、こういった状況こそが市場による価格発見機能の阻害に他ならない。官僚のような言葉遊びに陥ることなく、率直かつ真摯に市場の声に耳を傾けることが、中央銀行に望まれる姿勢であろう。

年度末が近付いても、慌てて債券を募集する動きは見られない。金利の先高感については、黒田総裁の再任が提案されたことで、政府による金融緩和の継続期待が明確に示された形となり、2月頭の金融市場に大きな変動以前に戻ったと言って良いだろう。欧米の経済回復が良好で金融緩和が縮小され、米国が利上げを複数回実施したとしても、日本の金融緩和は容易に揺るがないということなのだろう。特に、株価が大きく下げて戻って来る局面でも、為替が概ね円高に推移したことは、為替市場が転換期にあることを示唆している可能性がある。かつてのような円高イコール株安という図式が成り立たなくなっているのかもしれない。今後の展開に注意すべきだろう。

メーカー等のレア物の起債が行われ、投資家の購入意欲はなかなかに強い。フリークエントイシュアーの社債も含めて、概ね順調に新発債が消化される展開となっている。投資家が3月の声を聞いてスタンスを変えたというよりも、市場実勢に配慮したプライシングが行われていることのようである。特に、超長期債に対する投資家の需要は強いようである。ただし、そのことが必ずしも発行体に対する超長期の与信を是とした行動でないことには留意しておきたい。期限前償還条項の付された劣後債も含めて不動産セクターの40年債に対する与信については、今から40年前がバブル経済の萌芽もなく、二つのオイルショックの狭間であったことを思い浮かべると容易であろう。あなたは40年間その債券を持ちきれるか?純粋な民間事業会社にとって期限前償還条項の使用不使用は、経済環境や事業環境を考慮した経済合理性によって判断される。現状以上の更なる金利低下は考え難いが、金利が上昇していれば、低利付債に含み損が発生している可能性は高い。20年や30年後の担当者に、その処理や負担を押し付けて良いのか?投資家はより慎重に超長期の与信が意味することを考えておくべきだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/19~2/23

2月初めに生じた株式・為替の変動については、単なるボラティリティ低下の反動による乱高下という見方が強い。そもそも各国中央銀行による資産買入れによって、市場機能が低下しており、特に日本においては、未だに中央銀行が国債・社債・株式ETF・J-REITと買入れを継続している。米国の景気回復を裏付けにした金融緩和の縮小が、長期金利の上昇を招き、結果として、他の資産の変動という形で影響が波及したと考えられる。1987年10月のブラックマンデーも、発端はドイツの金融市場と考えられており、世界的な株価の下落は、すぐに回復した。今回も2週間経たないうちに、ほぼ市場は落ち着きを取り戻したように見える。下がり過ぎたボラティリティの自律的反発と視ることで、現時点は市場が落ち着いたようである。日本はこれから決算期を迎える時期であり、株価や金融市場は大きく動かないと期待されるが、その分、新年度入りしてからの変動幅の大きさには留意しておきたい。

年度内で起債市場で募集が出来るのは、実質的には、3月10日過ぎまでである。12日の週の後半までと考えるのが妥当だろう。昨年の最終日は15日の水曜日であったし、今年も最大で16日の金曜日までであろう。もしかしたら、もう少し早いかもしれない。投資家の購入ニーズは根強くあるものの、金利もスプレッドも潰れている状況では、一般債に対する意欲は必ずしも強くない。特に、年度内の資金消化を意識することはなく、むしろ新年度入り以降の期間損益を考えるのではないか。利回りやスプレッドが高い場合には旧年度中でも購入するが、慌てないというのが基本的なスタンスだろう。

この週の起債に対する反応を見ると、投資家の購入意欲の低下が顕著に感じられる。スプレッドの乗った銘柄や、年限が長く利回りが1%を越える銘柄、さらには、日銀オペでの買入れが確実な3年債などは、引続き問題なく消化されるのだが、中途半端な年限でスプレッドにも妙味のない場合には、投資家の需要がさっと退いてしまうのである。

この週の起債の中では、起債頻度の少ない三菱ケミカルホールディングスの10年債・20年債やアコムの5年債は、マーケティング開始後に増額する展開となったが、それ以外はなかなか苦戦した模様である。特に、23日の金曜日に募集された九州電力の5年債及び20年債、東急不動産ホールディングスの10年債及び20年債、JFEホールディングスの5年債は、いずれも難航したようである。東急不動産ホールディングスの20年債は0.98%クーポンであり、1%の乗せていればもっと異なる展開となったのではなかろうか。果たしてこうした投資家の選別が年度内続くのか。3月中旬までの募集期間に動く案件はあまり多くなさそうであり、発行体と投資家の駆け引きが続くようである。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/12~2/16

節分以降、前週からはじまった市場の変動が、多少なりとも起債市場にも影響を与えている。もっとも前年のこの時期も、民間企業の12月決算発表が終わったことなどから、公的セクターから民間企業へと起債の中心がシフトするタイミングである。2017年は、2月16日の木曜から民間セクターの起債が再開となり、翌金曜にかけて多くの募集が行われている。しかし、今年は、市場の不安定さもあって、16日の金曜日一発勝負である。

しかも、条件決定した顔触れを見ると、個人投資家向けの社債が四国電力とイオンモール、公共セクターが中日本高速道路とあって、純然たる機関投資家向けの社債となると、東京建物の3本立て、三協立山の初の起債、それにコンコルディアフィナンシャルグループの劣後債といったところになる。前年の木曜と金曜は、電源開発、ユニーファミリーマートホールディングス、三井不動産、セントラル硝子、リコーリース、協和エクシオ、伊藤園、首都高速道路、JR西日本、名古屋鉄道、三菱UFJホールディングスの個人投資家向け劣後債と多彩な顔触れであり、今年はやや物足りないといった感じが拭えない。

両年を通じるキーワードは、個人投資家向け、不動産、高速道路といったところだろうか。その中から不動産に注目してみると、2017年の2月に募集された三井不動産債は、日銀オペを意識した3年債250億円と20年債100億円の組み合わせであった。一方、今年の東京建物は、5年債100億円と10年債100億円に20年債150億円の三本立てである。20年債は当初50億円程度といわれていたのに、投資家のニーズが強く150億円まで増額されている。この20年債と5年債は良好な売行きであったようだが、10年債は苦戦したらしい。このネームで、10年の0.48%クーポン、国債対比+42bpsのスプレッドは必ずしも投資家の眼鏡には適わなかったようである。20年債は1.08%クーポンであり、クーポンが1%を越えたところが、良好な売行きを支えたものと考えられる。なお、同社の格付けは。JCRのA-格であり、三井不動産のAA格から見ると随分劣る。昨年の三井不動産の20年債は、0.929%で、1%に届かなかったのである。

売行きがもっとも良かったのは、コンコルディアフィナンシャルグループ(横浜銀行と東日本銀行の経営統合により誕生したフィナンシャルグループ)の期限付劣後債かもしれない。10年債であるが、5年経過時点での期限前償還が可能であり、クーポンが0.4%の固定から、6ヶ月円Libor+28bpsに変化する。通常は、期限前償還を前提とした5年債として考える債券であり、劣後プレミアムが上乗せになっている。金融機関の劣後債については、コールされない可能性は極めて低いことから、事業会社の劣後債とは異なり、早期償還前提での投資が現時点では可能だろう。

国内起債市場を斬る 旧正月特別号:なぜ、日本ではハイイールド債が根付かない?

市場というものを作り出すことは、誰にとっても容易でない。基本的には需要と供給がバランスするのが市場である。発行量の4割以上を日本銀行が保有している国債などは、既に正常な市場機能を喪失していると考えて良いだろう。多数の市場参加者が存在することは、健全な市場であることの一つの条件であろう。歴史的には、官公庁や取引所が市場の創設を誘導したこともある。解説された市場が一旦は取引が成立して成功したかに見えたとしても、市場創設のご祝儀が途絶えると、休息に萎んでしまう。健全な市場であるためには、参入障壁がないか低いこと等様々条件あるが、本質的には取引ニーズの存在することがもっとも重要な要素である。

日本にハイイールド債市場が根付かない理由としては、幾つかの要因が考えられる。投資家のほとんどは、仮に利回りが高くても、ハイイールド債を購入しようとしない。それは、信用力対比のスプレッドが十分にないと考えられているだけでなく、ハイイールド債の保有コストが小さくないからである。金融庁の監督下にある投資家は、いわゆる投資適格に満たない社債を保有している場合には、その保有を正当化し非分類とするための自己査定手続きが必要になる。その手続きを行うための手間やコストに見合うスプレッドが必要になるため、ハイイールド債を購入するために必要なスプレッドは、信用力見合いを越えたものが必要になるのである。

しかし、こうした手間の議論は間接的な要因でしかない。根本的な要因は、ハイイールドに相当する信用力の企業に対しては、融資金融機関による融資が資金ニーズを満たしているからで、敢えて社債を発行するまでもないと考えられるのである。つまり、想定される発行体にハイイールド債を募集する必要性がないのである。つまり需要と供給が存在しなければ、市場は成り立たないのである。

仮に官公庁や取引所は旗を振っても、ハイイールド債市場は育たないだろう。それは、日本証券業協会が10年近く努力しても、ほとんど何らの変化が見られないことで容易に理解できよう。ただし、官公庁の旗の振り方によっては、市場の活性化に誘導する方策はある。すなわち、金融機関の低信用力企業に対する融資について、ハイイールド債同様のコストを必要とするような施策を行うとか、不十分なスプレッドの貸付に対してペナルティを課すとかである。つまり、企業も銀行もが融資に依存できないようにするのである。ところが、日本の低信用力企業に対する融資問題の背景には、更に、政府系金融機関による融資の存在がある。民間金融機関は率先して低利融資を実行しているのではなく、競争によってやむを得ず低利融資を強いられている可能性もある。

こうして考えると、日本にハイイールド債が根付かないのは、単に特定の誰かによるものではなく、市場構造全体の問題である可能性が高い。時間はかかるかもしれないが、複数の要因を少しずつ解きほぐして行けば、欧米並みのハイイールド市場の創設も、夢ではないと期待する。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/29~2/2

12月四半期末決算の発表シーズン迎え、起債は細々である。それでも、2月に入ると動きが多少増えて来た。折しも、米国株式の暴落、乱高下で、決算を控えた国内投資家も揺れている。年度末まで2ヶ月を切ったことで、発行体も投資家も当初計画の遂行を意識する時間帯である。特に、公共セクターは予算消化に血道(ちみち)を挙げることが想定される。四半期ごとの調達計画を策定していたならば、3月中旬までの募集可能期間に動かなければならない。今の時間帯は、年度末までの募集に向けた最後の準備期間である。

10年長期国債の入札が行われ、米債の金利上昇を受けて日本の中期国債利回りも上昇する中で、日銀による7ヶ月ぶりの指値オペ実施という相対的に不安定な相場付きであったが、わずかながらも債券の募集が行われている。1月末に社債を募集したのが、THKである。同社は機会部品メーカーであり、最終消費者には馴染みが薄い。今回募集されたのは、第11回5年債と第12回7年債の各100億円であった。希少性のあるメーカーの社債ということで、順調に消化されたようである。他に起債がないという状況は、売行きに間違いなく貢献するはずである。

カレンダーが2月に替わると、阪神高速道路と首都高速道路の二大都市圏の高速道路運営会社が社債を募集している。前者は3年債100億円で、後者は5年債400億円である。いずれの債券も日本高速道路保有・債務返済機構の重畳的債務引受条項が付されており、予定通りに債務負担が移行するならば、日本国債と同程度の信用力が期待できるものである。ただし、格付けに関しては、複数格付を取得している場合の意識からJCRのAAA格を取得した首都高速道路と、R&IのAA+格のみを取得している阪神高速道路で対応が異なるのである。

2月に入って社債を募集したのは、三井住友ファイナンス&リースである。10年債100億円を募集している。業種特性を考えると、やや年限としては長いのであるが、国債対比+35bpsのスプレッドで問題なく消化されたようである。これも起債閑散のためなのか、三井住友フィナンシャルグループのサポートを期待したものなのか。

2月の起債は財投機関債などの公共セクターがまず動き、その後から、民間お社債が追随する展開になりそうだ。日米の株式市場の波乱を受け、日米の金利水準も安定しない可能性がある。タイミングによっては、高めの利回りが得られる状況があるのかもしれない。