国内起債市場を斬る 起債評価:2/18~2/22

漸く年度末に向けての起債が活発になりはじめて来た。とは言っても、昨年の夏から秋に診られたような金利の上昇懸念は沈静化しており、10年以内の年限の国債利回りがマイナスに沈み込んでいる状況においては、国債対比のスプレッドは必然的に大きくなってしまうために、発行体側の調達意欲も高まらない。低金利であることを活用するのなら、長めの年限で調達することも考えられるが、日本銀行の強力なイールドカーブコントロールが微動だにしそうもないために、慌てる必要はないと考えているのではないか。投資家側も特に無理して社債等を購入するつもりはないようであり、何となく落ち着いた均衡が成立しているようである。

この週に募集された債券の中では、日本ハムが5年債・7年債・10年債の3本立て各100億円を募集している。格付けはA(R&I)及びA+(JCR)という水準であり、フリークエントイシュアーではない。今回が第10回債から第12回債の募集である。食品メーカーの社債に関しては、一般的に製品に関するヘッドラインリスクが顕在化しない限り、強い投資家のニーズがある。好不況に大きく左右されない消費者のニーズに支えられるという業態の特性であるが、産地や賞味期限等の表示偽装などスキャンダルが生じた場合には、消費者の健康や生死に影響を与えかねないために、一気に収益力が悪化し信用が失われる可能性がある。10年債の国債対比スプレッドは+38bpsで、同日に募集された中国電力の10年債よりも4bpsほどタイトである。中国電力の格付けはA+(R&I)及びAA(JCR)とより高水準であり、電力債に対するプレミアムを考慮しても、やや日本ハムの10年債に割高感がある。

相変わらずノンバンクの起債が多く三菱UFJリースの3年債、リコーリースの3年債、日立キャピタルの5年債といずれも100億円ずつの募集が行われている。なお、日立キャピタルの5年債は、R&Iよりグリーンボンドアセスメントを得ている。認定の理由としては、“調達資金の使途となる対象事業は、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーによる発電事業である。尚、今回発行されるグリーンボンドの調達資金は、現在子会社において開発されている太陽光発電事業の設備購入等のための子会社向け貸付金の一部(新規貸付金(約4割)及びリファイナンス(約6割))に充当される予定である”とされている。しかし、お金に色がない以上、この程度の理由で“グリーンボンド原則2018及び環境省のグリーンボンドガイド ライン2017年版に則ったものである”と認定されるのはいかがなものか。しかも、アセスメント機関が信用格付けの付与会社であるというのも、構造的に妙である。弊誌欄で度々警告させていただいているが、グリーンボンド評価の適正な運用を求めないと、いずれすべての起債が、グリーンボンドと認定されてしまいかねないだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/5~2/15

2月に入っても、起債市場は引続き閑散期にある。この2週も、月初めから続く公共債が起債のほとんどを占めている。前半の週末である8日に盛り上がりを見せたとは言え、ほぼ公共債が主体である。分類学上、新関西国際空港や西日本及び阪神の高速道路は、社債と言えなくもないのだが、新関西国際空港の起債は財政投融資計画に基づくものであって、財投機関債とされるべきものである。西日本及び阪神の高速道路会社による社債は、確かに社債ではあるものの、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受条項が付されており、最終的には財投機関債発行団体の債務に帰すため、実質的な財投機関債と同等の枠組みにあるものと考えられる。したがって、広い意味での公共債カテゴリーに属するものと考えて良いだろう。

唯一例外の位置付けにあるのが、キューピーの社債であった。食品メーカーに位置付けられる同社は、11月期決算を採用しているため、12月期や3月期決算企業とは異なるタイミングでの社債募集が可能になったものである。こうした決算期の異なる企業は、もっと他社と異なる時期での社債募集を考えると良いのだが、右に倣えの体質が強い企業の場合には、なかなか踏み切られないことが多いようである。

建国記念の日からはじまった週に入っても、状況には大きな変化が見られない。相変わらず、首都高速道路の社債は、実質的な財投機関債とみなされる。その他に債券を募集したのが、地方公共団体金融機構である。月例の10年債200億円を募集した後に、15日の金曜日に40年債をフレックス枠の中で募集している。10年債は、国債利回りのマイナス水準への低下もあって、クーポン0.166%で国債対比スプレッド+17bpsと見るも無残な状況である。一方、40年債は同機構にとって初めての募集となる。厳密には、FLIPに基づく債券として、40年債の募集履歴はあるのだが、引受シ団を組んでの起債としては初めてであり、40年第1回債の回号を得ている。国債対比+20bpsと10年債を上回るスプレッド水準を付されたものの、クーポンは0.882%と1%にも満たない。当座の利回り確保目的の投資対象としては、信用力と流動性の観点から問題ないが、将来の金利水準の変動に対しては、懸念を抱かざるを得ない。

いつまで低金利が続くかというのは日本国内のすべての債券投資家が持つ疑問であり、日銀による強力な金融緩和が暫く続くことが確実視されるものの、40年という長いタイムスパンにおいては、環境の変化が確実視される。「何時まで続くか低金利、何時までも続かぬ低金利」と観るのが一般論だ。低金利が更に30年、40年と続いているならば、日本経済は緩やかな停滞を続けているだろうし、そもそも停滞経済において金利水準は安定を欠くことになると思われるために、持続可能性が疑われるのである。消去法で残った選択肢なのかもしれないが、40年は持ち続けられるとは誰も思っていないのだろう。

国内起債市場を斬る 旧正月特別号:2019年の投資環境を考える

投資家の多くは、2018年度決算の着地を睨みつつ、来年度の投資計画を検討していることだろう。特に、株価や米国金利が大きく変動している中では、如何にリターンを獲得するかは、例年以上に頭を悩ませることになるだろう。米国の利上げが停止されるという観測からは、米金利の上昇が緩やかになるという想像ができる。となれば、為替の要因を無視すれば、米債への投資が妙味を持つ可能性はある。一方、株価が変動し、特に、過去数年のような上昇トレンドにならないと考えるなら、為替は横ばいから、やや円高になる可能性を念頭に入れておくべきだろう。為替変動によって、円投からの米債の投資妙味は相殺されてしまうかもしれない。

外債と株式が投資対象の中で相対的に後ずさりするならば、国内債券への投資が必然的に消去法で残ってくる。日銀は、依然強力なイールドカーブ付量的質的金融緩和を、物価安定の目標を実現できるまで継続すると明示しており、執行部の退任や政権によるサポートの喪失といった事態が起きない限り、国内の低金利は続くだろう。昨年の夏にあった金利上昇懸念は、あくまでも米国の金利上昇と、それによる円安懸念を背景としたものであり、日本国内の要因からの金利上昇は見通しが立たない。仮に金利が上昇する事象が生じたとしても、イールドカーブコントロールで吸収されてしまうだろう。

米中の経済戦争だけが中国の景気後退の要因ではないだろう。そして統計操作が中国だけの問題でないこともわかった。なかなか投資対象の選択に自信は持てない環境が続くだろう。企業業績が低迷するなら、金利が低い環境において、信用リスクやデュレーションリスクを取ることで平均利回りを引上げるという手段にも、自制が必要である。かといって、不動産やインフラ投資といったオルタナティブ資産に向かうのも、高値掴みになる可能性が極めて高い。かなり八方塞がりの投資環境が、2019年度には待っていると考えられるのである。

簡単なソリューションは存在しないだろう。慎重に環境や投資対象を分析しつつ、分散効果を意識することが唯一の答えなのかもしれない。とは言え、過去を振り返ると、世界金融危機のような大きなショックが生じた場合には、国内債券以外に対する投資は軒並みマイナスのリターンとなった。そうなると、国内債券の利回りがプラスになったと言っても、他の資産の大きなマイナスをカバーするには不十分なものにしかなり得ない。投資家にとっては、辛抱の求められる新元号の初年度になるのではなかろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/28~2/1

起債市場は閑散期に入った。この週も、月末を挟む週というタイミングであり、国内公募社債等で募集されたのは、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく起債と、社債が1社2回号のみであった。地方公共団体金融機構の起債は、定例年限の起債以外に、フレックス枠があり、更に、FLIPに基づく起債がある。フレックス枠が比較的まとまった金額の起債を、主幹事方式で行うのに対し、FLIPは予め指定されている証券会社が30億円以上の販売目処を持って、発行体と折衝して引受けるものである。定例の募集年限と重ならない年限で発行されることが多く、9年債など普通の公募普通社債等では見られない年限も少なくない。主に四半期の最初の月に募集されることが多く、そういう意味では1月の月例債が募集された後のタイミングで、23日に第453回9年債200億円と29日に第454回35年債50億円を募集している。FLIPの起債で200億円というのは、年間でもあまり多くない。なお、来年度はフレックス枠もFLIPも増額される方針である。

メーカーで公募社債を募集したのは、機械メーカーのTHKである。今回募集したのは、5年債と7年債各100億円である。海外で事業展開を行う連結子会社と決算期を合わせるために、2017年より3月期決算から12月期決算へと変更している。それが結果的に、このタイミングでの起債を可能にしたとも言える。同社が2月14日に公表するのは、12月期決算に移行して初めての年間決算である。今回の起債が第13回債と第14回債であるから、決してフリークエントイシュアーではない。今回がほぼ1年ぶりの社債募集である。格付けは、R&IとJCRの2社からA+格を取得している。

THKは1971年に目黒の不動前の近くで、寺町博氏が東邦精工株式会社を設立創業。工作機械部品、リンクボール、LMローラー、LMボールの販売を開始した、歴史の新しい会社で、1984年に現在のTHKという社名に変更している。比較的社名の変更タイミングは古いが、最近のアルファベット3文字の社名変更は、和製英語との狭間でいささか違和感を感じる。THKの場合も、旧社名の英文名称を略した形のようだが、最近のTVCMで盛んに流しているように、旭硝子は同様にAGCへ社名変更をしている。名は体を表すと言うように、社名が何を行う企業かがわかる方が望ましいのか、本業以外の新分野を開拓しようとするIR戦略の一環なのか、経営者の真意は様々のようだ。もっとも買収や統合の結果で、何の会社かわからなくなっているJXTGホールディングスという社名も、Wリーグ(女子バスケット)のチーム名によって「ENEOSの会社なんだ」と世の中に浸透している気がする。NY取引所のティッカーを決めるわけではないので、社名変更の場合はもっと強い「ブランド力」を意識した新会社名にしていくべきだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/21~1/25

12月決算の発表がはじまると、起債量は急速に細ってしまう。例年のことだが、これから2月中旬くらいまでは、ほとんどが公的セクターの起債になってしまうだろう。そしてその後は、3月中旬までの起債ラッシュという流れになる。金利先高感は消え、むしろ日銀による追加緩和が市場関係者の中で囁かれている中では、慌てた起債は見られない可能性が高い。一方で、年度内の予定消化という意味で、発行体も投資家も、ある程度の案件消化を求めるのではないか。M&Aに関係する大型案件がなければ、平年並みの案件数が見られるものと期待される。

この週の起債市場でもっとも募集金額が大きかったのは、劣後債である。一つは、大陽日酸(4091)のハイブリッド債である。35年物のノンコール5年債は、1,000億円と巨額の募集になった。劣後性を考慮した格付けは、R&IのBBB格及びJCRのA-格である。事業会社の劣後債に関しては、期限前償還が最初のタイミングで行われない可能性が厳然と存在する。つまり、期限前償還を前提にした5年債として評価するのは誤りであり、投資家は5年後の事業環境や金利環境を見据えて、期限前償還の可能性を判断しなければならない。当初5年のクーポンである1.41%は、5年債としては十分に高いクーポンである。同日に募集された東京電力パワーグリッド債は、格付けがR&IのBBB+格及びJCRのA格と両社で相反する上下関係にあるが、クーポンは0.58%である。最初の償還期以降は、6ヶ月物円ライボー+2.4%の変動利付きになるので、通常の事業環境であれば、期限前償還されるだろう。しかし、メーカーの事業環境の変化は容易に予測できるものではない。近年の東芝やシャープの展開を見ると、間違っても35年の与信はできない。

なお、大陽日酸のハイブリッド債は、もう一本40年物のノンコール10年債が80億円と小額で募集されている。金額的にも圧倒的に少ないが、当初10年のクーポンは、1.87%クーポンである。10年債としては魅力的であることは間違いないが、期限前償還の有無のみならず、より超長期の与信可能性を考えるのは難しい。金額は当初の募集予定が60億円程度とされていたことから、発行体が小額を要望したものと考えられるが、80億円はいかにも少ない。

もう一つの劣後債は、かんぽ生命の30年物のノンコール10年債である。当初10年のクーポンは1%で、格付けはJCRのA+格を取得している。持ち株会社の日本郵政との親子上場であり、そもそも事業展開の将来性があまり見えない企業であり、株式購入ですら躊躇されるのに劣後債に踏み込むのは、容易でない。高齢化の進む社会で生命保険ビジネスの将来展開は厳しいものがあるし、地方にも営業展開を義務付けられている旧官営保険会社の収益性は決して高くない。親会社の日本郵政が米アフラックと資本提携に踏み込む等グループとしての保険ビジネスのみならず、収益獲得そのものについて難航している節が伺われる。幸い業態が生命保険会社であることから、期限前償還をスキップする可能性は事業会社に比べると極めて小さい。スキップは金融庁による承認が得がたいものと考えられるのである。格付けの差もあるが、10年債として割り切り、時価評価をしなくて良いのであれば、かんぽ生命の劣後債の方が、大陽日酸のハイブリッド債よりも投資に対する安心感が高いのではないか。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/15~1/18

1月の起債ラッシュは、18日の金曜日に起こった。水曜日以降、少しずつ募集が行われ、中には森ビルの劣後債500億円という大型の募集もあったが、金曜日の案件集中度は高い。週全体も含めて業種別の傾向としては、財投機関債等の公的セクターが引っ張り、ノンバンクと鉄道が花を添え、その他の社債が色々と出て来たというところだろうか。中でも、案件の集中した金曜日は、鉄道関連だけを見ても、東京急行電鉄2本立て計200億円、東京地下鉄3本立て計300億円、相鉄ホールディングスと京阪ホールディングスが各100億円と、全部合わせると、7本も募集されたのである。しかも、いずれもが10年債以上の年限の長い債券であった。それに加えて、成田国際空港が3本立て計200億円、東日本高速道路が500億円、日本高速道路保有・債務返済機構が100億円と、運輸関連の起債が少なくなかった。

運輸やノンバンク以外で注目を集めた一つが、村田製作所による3年債400億円と5年債600億円の計1,000億円の募集である。初回の公募社債募集ということもある上に、格付けがAA(R&I)格と高水準なのも巨額の起債をサポートしている。5年債のクーポンは0.15%で、同日に募集された他の5年債と比べると、成田国際空港の0.05%や東日本高速道路の0.07%、オリエンタルランドの0.12%を上回り、セブン銀行の0.16%を少し下回る水準である。セブン銀行も格付けは同じR&IのAA格であるが、5年債の募集金額は村田製作所の600億円の3分の1の200億円でしかない。村田製作所は近年TVCM(雑学系と分解系というCM)も打っていることもあるが、基本は電子部品メーカーであって最終消費財のメーカーではない。そのことが逆に、業績が安定し易いとされることに繋がり、企業の強みに感じられるのかもしれない。

なお、この週に起債見送りを公表されたのが、トヨタファイナンスとオリエントコーポレーションの5年債である。どちらもグリーンボンドとしての募集を行う観測が見られていたが、週後半までに見送りが報じられている。金利水準の低下など起債環境の悪化が要因とされるが、ノンバンクの起債に対する安易なグリーンボンド認定は警戒しておいた方が良いだろう。そもそも日本の社債に関しては、特別な仕組みを盛り込まない限り、会社の一般財産全体に対する請求権が認定される。したがって、再生エネルギーに対するファイナンスであると追補目論見書に記載しても、「金に色はない」のである。つまりグリーンボンドとして調達しても、資金が必ずしも表明された使途のみに使われるとは限らないし、そういった限定は法的に出来ないのである。表明した使途に使われるというのはフィクションであり、発行体のフィクションに投資家が乗っかった形で成立して来たのがグリーンボンドである。結局のところ、グリーンボンドやソーシャルボンドであるという認定基準も、ICMAや環境省、日本総合研究所、格付会社等が乱発している。今一度、基本に立ち返って、その意味を考えるべきではなかろうか。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/7~1/11

2019年の債券募集がはじまった。しかし、マーケットは荒れ模様、世界中の株価が安定せず、国内金利も10年国債利回りがマイナスになったりするので、決して良好な起債環境とは言えない。日本銀行によるイールドカーブコントロールは、短期金利がマイナス0.1%に固定され、10年国債利回りがマイナス0.2~プラス0.2%のレンジに設定されている。結果として、年限がより長くなるに連れて、金利変動幅が大きい。逆に言えば、短い年限の金利水準はあまり動く余地がないということである。市場が落ち着かない状況にある場合には、長期債よりも中期債の方が募集しやすい。

結局のところ、市場が安定しない中では、投資家は公的セクターや中短期債を好みがちになる。しかも、10年長期国債の入札後であるから、地方債からはじまる公共セクターの起債が行われるのには絶好なタイミングである。そうした好機を窺って出てきたのが、日本政策投資銀行の三本立てである。募集されたのは、3年債・5年債・10年債の各200億円である。3年債は0.001%クーポンで単価が100円00.1銭である。5年債は0.03%クーポンで、10年債は0.195%クーポンである。前年10月に募集した際と3年債及び5年債のクーポンは変わっていないが、10年債のクーポンは0.309%から大きく低下している。なお、10年債の国債対比のスプレッドは、+15.5bpsから+17.5bpsと金利低下を反映して拡大している。

中短期債の募集に適しているという環境は、ボーナスシーズンの後というリテール投資家の状況と相俟って、個人向け社債の条件決定が複数行われている。もっとも毎年1月に個人向け社債を募集するというのは、東武鉄道と小田急電鉄の定例である。両社とも前年に続いていずれも3年債を条件決定しているが、東武鉄道は0.16%クーポンから0.15%クーポンに低下し、小田急電鉄は0.11%クーポンから0.1%クーポンへといずれも1bpの水準低下が見られる。金利の低下傾向は中短期債にも波及しているということなのである。

なお、11日の金曜日にはクレディセゾンも個人向け10年債の条件も決定している。東武鉄道や小田急電鉄の3年債とは異なる年限であり、クーポンは0.48%と高水準である。しかも、両鉄道会社の個人向け社債が100万円単位で募集されるのに対し、クレディセゾン債は10万円から投資可能である。ノンバンクの10年債は投資対象の年限としては、悩ましいところである。みずほフィナンシャルグループともっとも親密な関係であったが、近年はやや位置付けに変化もあるようだ。10年の与信をどう考えるか、キャッシュレス社会到来への対応格差を含め、思いとどまりたいところではないか。

国内起債市場を斬る 新年特別号:金融市場の大変動と国内起債

2018年末から金融市場が大きく揺れ動いている。世界的な株式市場の下落は、米アップル社の業績予想引下げに起因するのかもしれないが、背景にはもっと大きな物があるように思える。最大の要素としては、これまで先進国が続けて来た金融緩和の方向変化であろう。資産買入れを中心とした強力な金融緩和は、必ずしも物価全体をインフレへ誘導することはできなかったが、資産価格を下支えし、少なくとも株価を押し上げて来たのである。ところが、既に景気好調なFRBは金融緩和から引締め方向に政策を変更し、ECBも資産買入れの停止に向かって動きはじめた。その結果、先進国経済の基盤となっていたマネーフローの潤沢さが変化しはじめたのである。

一方で、強いと思われてきた先進国経済に、わずかながらも変調の兆しが見えている。米国経済が必ずしも想定されたほどの強さを持続できないという観測は、米中の貿易摩擦が激化し関税引上げ競争へと変化したことで、急速に強まっている。しかも、中間選挙で下院の過半数を失ったトランプ政権は、選挙公約の実現を求めたために、想定外の米連邦機関の一部閉鎖を招来したのである。2月には閉鎖リスクがあると予め考えられていたが、クリスマスから年末のタイミングでの閉鎖は、米国経済に強い負のインパクトを与えてしまったかもしれない。景気は「気」からというのは、決して誤りでない。バブルの過熱も、デフレやスタグフレーションによる沈滞も、世の中の雰囲気と極めて強いリンクが確認される。経済が弱いかもしれないと感じてしまったところから、自己実現がはじまった可能性は高い。

アップルショックによる株価の下落による影響は、米国の株式市場に留まらない。為替はドル安円高になり、日本の円金利も大きく低下してしまったのである。既に年末に10年国債利回りはイールドカーブコントロール導入以降見られなくなっていたマイナスとなってしまっていたが、年明けは更にマイナス0.05%といった深さになったのである。日本銀行が昨年7月に変動幅を拡大しているため、マイナス0.2%までは政策の変更もなく許容される。市場参加者の少ない時間帯でのオーバーシュート気味であるが、2019年の起債市場は10年金利がマイナスの状況からはじまることになろう。

イールドカーブコントロールが導入された2年3ヶ月前のことを、思い出した方が良いかもしれない。10年金利がマイナスに沈んだことで、10年債のプライシングには国債利回りを参照したスプレッドプライシングが難しくなり、利回りの絶対水準で行わざるを得なくなる。5年債や7年債より短い年限で定着しているプライシング方式の採用が拡大されるのである。さすがに20年債のような超長期の利回りまでマイナスになることは想像し難いが、過度な低利回りは投資家の債券購入意欲を減退させるために、スプレッドの上乗せを求められる可能性も高い。一方で、短い年限で利回りを確保できない投資家が、スプレッドに目を瞑って(つむって)利回りを確保しようとするならば、長い年限の債券はスプレッドがよりタイトになることも考えられる。足元の低金利・マイナス金利が継続すると見るならば、債券の購入を継続する可能性もあるが、もはや円金利・クレジットに投資妙味を感じず、当面の債券購入を先送りにすることも考えられる。果たして市場参加者はどちらの方向に向かうだろうか。それでなくとも、2019年の世界経済に対しては懸念を呈する見方が少なくないため、起債市場だけでなく、世界の債券市場全般が低迷した展開になることも十分に考えられる。どうも明るい新年は期待し難いのではないか。

国内起債市場を斬る 年末特別号:2018年の起債を振り返る

一年分の起債を並べてみると、幾つか今年の特徴が浮かび上がって来る。まず、ここ数年続いているものではあるが、今年も3年債の起債が比較的目立ったことであろう。国債とは異なり、基本的にバイ&ホールドの投資目的が多いために、社債等一般債の利回りはマイナスになり難い。利付国債はどんな年限でも日銀が購入対象にしており、当該年限の市場実勢であればマイナス金利でも購入してくれるのである。ところが、社債に関しては、残存3年以内が日銀の購入対象であり、実勢に応じてマイナス金利でも購入する。結果的に、3年債がプラス利回りで募集されたものを、日銀オペ持ち込めば瞬間的に売却益が約束されるのである。日銀の購入対象銘柄については、格付けの制限がある他に、同じ社債を大量に購入することはしない。つまり、新発3年債がセカンダリーになったタイミングでの、日銀オペ応札がベストになる可能性は高い。結局、3年債投資のほとんどは、猿でもできる日銀対応の「鞘取り」でしかなく、本質的な投資ニーズに見合ったものではない。日銀による社債等オペのルールが変わらない限り、来年以降も、同様のことが見られるだろう。

次に、事業会社によるハイブリッド債が引続き見られたことである。ハイブリッドと言えばまるで「EV」を連想し聞こえは良いが、つまりは、劣後債である。借入金には結果的に多少劣位になるかもしれないが、優先債権となる普通社債と、普通株式の間にあるものがハイブリッド債と呼ばれ、社債に近いものが劣後債であり、株式に近いものが優先株と呼称される。資本性や利払いの繰延可否等の認定で、株式か債券かに近付く。古くから金融機関による劣後債の発行は見られていたが、近年では、事業会社等による類似の債券募集も多く見られる。格付会社が資本性を認定することで広く募集されるようになったものであるが、資本性の裏返しは債権者が持つ回収可能性の毀損である。その見返りが、プレミアムの上乗せになる。事業会社の劣後債は、金融機関等金融庁傘下の業態による劣後債とは異なり、利払いの繰延や元本償還の延期といったアクションが、発行体の裁量判断のみに任される。結果として、信用力の大きな低下や環境変化の生じた場合には、早期償還等が実行されない可能性が残る。つまり、どんなに早期償還条項やクーポンのステップアップ条項が付されていても、早期償還されない可能性を考慮し、契約上の最終償還まで元本が返済されない可能性を脳裏に入れておかなければならない。事業環境の変動が大きな企業の超長期劣後債は、どんなに慎重に企業・業界分析を行っても、やり過ぎということはないだろう。

今年の大きな特徴としてもう一つ挙げるなら、環境債やグリーンボンドと呼ばれる、ESG投資を意識した債券の募集である。株式の領域で進んできたESG投資が債券の世界にも及んできたのである。しかし、実際に発行した顔触れを見ると、メーカーならまだしも、ノンバンクや鉄道機構、更には、ANAホールディングスといった他業種の例も見られる。環境省等の外部に基準に合致していることを認定されたのであるが、より精緻な基準が必要ではないか。建設する訓練センターの設備が環境に配慮したものであるからと言って、それがグリーンボンドと言えるのだろうか。ノンバンクの例で見られる再生可能エネルギー施設の建設に対するファイナンスであるといった資金使途も、金に色がない以上、厳密な区分とはならない。結局のところ、発行体の言ったモノ勝ちであり、厳密に責任財産限定特約等を付さない限り、これでは何でもがグリーンボンドになってしまいかねない。グリーンボンドを投資対象にしているとアピールしたい投資家にとっても、認定されていれば何でも良いのだろうが。

国内起債市場を斬る 起債評価:12/10~12/16

いよいよ年内最後の債券募集である。前週7日の案件集中に比べれば、もはや起債ラッシュではない。7日はメーカー、ノンバンク、電力・ガス、鉄道、財投機関等銀行を除いて主要セクターが勢揃いした感すらあったが、既に12月10日を過ぎると、消化試合的な雰囲気も多少して来る。7日は楽天の劣後債が、3本で計2,990億円も募集されたために、本数と金額の両面で大きな数字となったが、この週は三菱UFJグループの永久劣後債が2本計1,550億円募集されており、募集金額としては決して少ない訳ではない。

13日に募集された社債は、富士フイルムホールディングスと三菱ケミカルホールディングスの化学対決となった。富士フイルムホールディングスは、既に写真フィルムだけのメーカーではない。元々カメラ等も取扱っていたが、近年では、更に、印刷機器に拡大しているだけでなく、化学領域や医薬品、化粧品等までに領域が拡大している。そもそも持株会社で多角化経営していると、伝統的な業種一つに区分することが難しくなっているのである。株式投資において、東証業種分類に基づいて偏りを作らないといったコントロールをすることもあるが、そもそも業種分類自体の意味が低下していると言わざるを得ない。富士フイルムホールディングスがそれの類し、JXTGホールディングスへの投資を石油・石炭商品に分類し、その分ほど出光興産や昭和シェル石油への投資を抑えることが適切だろうか。

14日の金曜日には、様々な10年債が競合した。小田急電鉄、雪印メグミルク、H2Oリテイリング、椿本チェイン(5年債50億円とともに)が、いずれも100億円の10年債を募集している。業種で言えば、陸運(鉄道)、食料品、小売、機械と様々であるし、格付けも、順にAA-(JCR)、A-(R&I)、A-(R&I)、A(JCR)と分散している。クーポンは、同様に、0.33%、0.45%、0.48%、0.52%と並ぶ。必ずしも格付けの順と一致しないのは、業種の差など様々な要因が考えられるだろう。公表されている国債対比のスプレッドは、+28bps、+40bps、+43bpsと並んでおり、椿本チェインはスプレッドを公表していないようである。より格付けの低い雪印メグミルクやH2Oリテイリングより大きなスプレッドを表示しないように配慮したとも考えられる。しかし、そもそも格付会社がR&IとJCRで異なり、市場参加者は一般的には、両格付け会社の評価には平均的に1ノッチ弱の差が存在すると考えていることから、実質的の同程度の信用力と見られている可能性が高いために、敢えて比較されないように工夫したという憶測も当たっているのかも知れない。