国内起債市場を斬る 起債評価:4/1~4/5

4月2日に10年長期国債の入札が行われイールドカーブの居所が概ね確定できたところから、2024年度の起債市場がスタートした。株価が上下に変動しても、金利水準はほぼ安定的な状況にある。物価や賃金の上昇を受けて金利が上昇する方向へ向う懸念はあるものの、日銀は金融緩和の姿勢を崩さない。投資家としては金利水準が上昇してから購入したい意向があるものの、利息収入の総額は金利水準と保有期間の掛算で求められるから、購入のタイミングは早い方が望ましい。この週後半に多くの社債等が募集されているが、投資家の購入意欲は強く、あるかどうか必ずしも定かでない金利上昇を待たずに、淡々とした購入姿勢を崩していないようである。募集された社債等のほとんどに対して超過需要が確認されている。

事前の予想では、例年通りのパターンから社債等で募集に動くのはまず、電力とノンバンクであろうと見ていたが、ほぼ予想通りの展開が見られた。まず、電力関連で募集されたのは、電源開発10年債100億円、東北電力が10年債300億円及び30年債130億円、中部電力が10年債350億円及び20年債100億円、関西電力が10年債123億円及び20年債90億円、九州電力が10年債200億円及び12年債100億円、北海道電力が10年債50億円と総計で1,500億円を越える。スプレッドを絞った関西電力債が端数の金額を刻んだ他、北海道電力は50億円限定のグリーンボンドの募集となっているが、他の案件は年限も含めて多様な募集となっている。いずれも10年債に加えて、超長期年限という組み合わせになっているのは面白い。

ノンバンクとしてはトヨタファイナンスが3年債400億円及び5年債600億円と、いきなり合計1千億円の募集を行っている。格付けがR&IのAAA格・S&PのA+格・ムーディーズのA1格と日本国債と同等かそれを上回る評価を得ていることもあって、起債観測の上がった時点よりも大きく増額しての募集になっている。金利水準の上昇もあって、3年債が国債対比の+20bpsというスプレッドプライシングで条件決定されており、今後の3年債の条件決定の基準が絶対値からスプレッドに戻る可能性を示唆する動きになりそうである。

財投機関債では、日本政策投資銀行が3年債400億円・5年債350億円・10年債300億円と1千億円を越える債券を募集しており、主要な募集年限の金利やスプレッドの居所を提示する形になっている。各年限ともが増額された募集となっており、投資家の根強い購入ニーズを確認できる。その他に、西日本鉄道が5年債と10年債を各150億円募集しており、今後、鉄道銘柄を募集する動きも続くことが期待される。

なお、この週で募集された社債等のうち、電源開発の10年債と西日本鉄道の募集した5年債及び10年債、それに北海道電力の10年債がグリーンボンドの認定を得ている。グリーンボンドを募集する例が増えているようにも見えるが、起債観測で上がっているものには、サステナビリティボンドやリンクボンドの動きもあるようで、この週はたまたまグリーンボンドが先行しただけに過ぎないと見ておきたい。