国内起債市場を斬る 起債評価:4/8~4/12

2024年度の起債市場が本格的に稼働を始め、様々な社債等を見ることの出来た週になった。前週の電力債登場に出遅れた関西電力や東京電力パワーグリッドといった電力債の募集があった他、四半期や毎月の頭によく起債する公的セクターでも、地方公共団体金融機構が10年債・20年債・30年債の3本計700億円をまとめて募集した他、東日本高速道路も2年債・5年債・10年債の3本で計1,790億円を募集している。格付けの符号としては日本国債と同じ水準である東日本高速道路の2年債のクーポンが0.314%と従来より高めの水準になったことで、日銀による金融緩和政策の見直しの影響が改めて意識される。それでも、同じ発行体の10年債は0.905%クーポンと1%を下回っており、まだまだ金利は低いと言わざるを得ない。

電力と公的以外の発行体はバラエティーに富んだ状況となった。DICや住友重機械工業、スタンレー電気、テルモといった様々なメーカーによる募集が見られた他、建設や不動産、運輸といった業種からも、日本郵船の他に大和ハウス工業、ヒューリックといった発行体が社債を募集している。三井住友系の複数のノンバンクや総合商社大手である伊藤忠商事による社債の募集もあり、まさに百花繚乱である。また、条件決定された社債の形態を見ても、GMOフィナンシャルホールディングスや光通信、丸井グループの個人向け社債があり、みずほフィナンシャルグループとかんぽ生命の劣後債もある他、事業会社からは大和ハウス工業も劣後債を募集している。なお、丸井グループの1年債は同社が継続して募集してきているセキュリティートークン債である。エポスポイント(エポスカードのご利用に応じ、同社所定の加算率でポイントを加算し、ポイント数によりマルイやマルイの専門店でのショッピング割引きや景品の交換、他社ポイントサービスへのポイント移行、社会貢献活動団体への寄付ができる特典)で利息を受け取るといった機関投資家には全く馴染まないスキームであるが、エポスカードのユーザーである個人投資家には利用価値は高い。1年債で1%というクーポンは、十分に魅力的だろう。

SDGs債では、東日本高速道路が全体をソーシャルボンドとして認定を受けている他、日本郵船の2本立ての募集では、5年債がトランジションボンドであり、10年債がグリーンボンドと細かく使い分けている。丸井グループの個人向け債もグリーンボンドとなっている他、大和ハウス工業の劣後債はサステナビリティリンクボンドである。4月に入って募集された社債等の中ではややSDGs債の目立たない感じがあったものの、ようやく様々な形態の物が募集されるようになって来た。

募集金額では、みずほフィナンシャルグループの劣後債が2本で計2,300億円と巨額であり、東日本高速道路が計1,790億円、かんぽ生命保険の劣後債が1千億円、東京電力パワーグリッドが3本で計1,800億円など大型の起債が相次いでいる。その他の案件も当初の起債観測が上がった時の募集予定額よりも、最終的な募集額が大きくなっている例が少なくなく、期初の投資家のよる債券に対する購入意欲の強いことが確認されている。すぐには日銀による利上げも見込まれないことから、当面、業種のバリエーションも様々な起債市場になることが予想されるが、3月末決算の発表時期を考えると、GW前までの俄かブームということになるだろう。