国内起債市場を斬る 起債評価:3/5~3/9

いよいよ社債等の募集される日も、年度内残りがわずかになっている。普通に考えても、3月12日からはじまる週が最後であると考えられる。それでも、まだ起債観測の上がっているものが複数あり、金曜日の16日まで募集が散発される可能性が高い。投資家としても引受証券会社としても、分散するのは歓迎であろう。

既に3月5日からはじまった週でも、債券の募集はパラパラといった感じである。特に、日銀の金融政策決定会合を意識したということはなく、むしろ慌てて起債する発行体が少なく、投資家も年度末が迫ったからといって、社債等に対する投資スタンスが変わるものでもない。メーカーの起債が本数として目立つ中、圧倒的な人気で消化されたのが、不動産銘柄であった。

まず、6日に野村不動産ホールディングスが40年及び42年の劣後債を募集している。いわゆるハイブリッド証券と呼ばれるものである。格付けは劣後性を反映して、R&IのBBB格とJCRのBBB+格である。一般的にBBBゾーンの普通社債で超長期年限のものを購入する投資家はいないだろう。それが、ハイブリッド証券などという美名を付されると、手を出してしまうのが一部の投資家の浅はかなところである。確かに、40年債は10年経過後に、42年債は12年経過後に期限前償還条項が付されており、発行体がコールオプションを有している。クーポンのステップアップ幅は、いずれも100bpsである。ハイブリットなのは発行体であって、10年や12年経過した時に、金利水準そのものがどうなっているのかというリスクを、どう捉えるかである。

また、不動産業界や野村不動産ホールディングスの状況がどうなっているだろか。いずれにせよ、これらの劣後債を単純な10年債や12年債と考えて投資するのは誤りである。金融庁によって期限前償還を監視されている金融機関とは異なり、事業会社の場合には、平気で、経済合理性の観点から期限前償還の適否を判断するだろう。仮にまったく期限前償還されなかった場合、不動産会社の社債に対する40年や42年の投資は正気の沙汰でないだろう。1980年代に不動産を含むバブル経済が膨れ上がったのは、30年ちょっと前のことでしかない。40年も先のことを見通せる業界ではないだろう。

そういう意味では、8日に募集された三菱地所の40年債も悩ましい存在である。野村不動産ホールディングスの40年物劣後債は、当初10年のクーポンが1.3%であった。一方、三菱地所の40年債はシニア債であるものの、クーポンは1.313%である。野村不動産ホールディングスの劣後債は、クーポンのステップアップが予定されており、一方で、10年経過時点以降に早期償還される可能性がある。劣後債であるから、当然、発行体の破綻時には債務の回収可能性が低い。三菱地所の40年債はシニアであるから、元本は優先的に回収できる。しかし、40年間のクーポンはフラットである。丸の内の大家と呼ばれる同社に関しては、信用力の低下を懸念する必要性は小さいかもしれないが、南海トラフや東京直下型での地震発生を考えると、今後40年間で大きな損害を受ける可能性は小さくない。やはり不動産会社に対する40年とかの与信については、より慎重に考えるべきではなかろうか。安易に現在のクーポンの絶対水準だけを見て投資を行うと、将来のファンドマネージャーが涙することは必至であろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/26~3/2

機関投資家向けに募集される新発債券の一般的な条件決定は、3月中旬までである。したがって、2017年度の起債市場もあと10日程度といったところだろうか。既に市場関係者のところには、起債評価機関から年度の起債評価に関するアンケート用紙が届いていることだろう。もっとも近年は、用紙というよりも投票様式だったり、オンラインの入力案内だったりといった形態であるようだ。

基本的に、日銀によるイールドカーブコントロールが続いて、多少長期金利が動いたものの、概ね金利水準はコントロール下にあったと言って良い。加えて、日銀はしつこく3年以内の社債買入を実施しているのだから、極端な格下げ銘柄や経営不安銘柄を除いて、社債のスプレッドが拡大することも考え難い。こうなると、起債に関する評価は売れたか売れなかったかという要素よりも、起債運営が適切に行われていたか、セカンダリーの実勢を発行条件に反映していたか、といった要素の色が濃くなる。債券が投資家に売れて当然な市場環境だからである。2月23日のように、募集された社債がいずれも苦戦したというのはレアな日であり、金利の変動についても、本来はスプレッドプライシングで対応できるはずのものである。日銀によるマイナス金利の導入でスプレッドプライシングの機能が低下している年限であれば、金利水準の変動が激しい状態に陥ると、債券の値決めが容易でなくなる。日銀は機能低下を否定するが、こういった状況こそが市場による価格発見機能の阻害に他ならない。官僚のような言葉遊びに陥ることなく、率直かつ真摯に市場の声に耳を傾けることが、中央銀行に望まれる姿勢であろう。

年度末が近付いても、慌てて債券を募集する動きは見られない。金利の先高感については、黒田総裁の再任が提案されたことで、政府による金融緩和の継続期待が明確に示された形となり、2月頭の金融市場に大きな変動以前に戻ったと言って良いだろう。欧米の経済回復が良好で金融緩和が縮小され、米国が利上げを複数回実施したとしても、日本の金融緩和は容易に揺るがないということなのだろう。特に、株価が大きく下げて戻って来る局面でも、為替が概ね円高に推移したことは、為替市場が転換期にあることを示唆している可能性がある。かつてのような円高イコール株安という図式が成り立たなくなっているのかもしれない。今後の展開に注意すべきだろう。

メーカー等のレア物の起債が行われ、投資家の購入意欲はなかなかに強い。フリークエントイシュアーの社債も含めて、概ね順調に新発債が消化される展開となっている。投資家が3月の声を聞いてスタンスを変えたというよりも、市場実勢に配慮したプライシングが行われていることのようである。特に、超長期債に対する投資家の需要は強いようである。ただし、そのことが必ずしも発行体に対する超長期の与信を是とした行動でないことには留意しておきたい。期限前償還条項の付された劣後債も含めて不動産セクターの40年債に対する与信については、今から40年前がバブル経済の萌芽もなく、二つのオイルショックの狭間であったことを思い浮かべると容易であろう。あなたは40年間その債券を持ちきれるか?純粋な民間事業会社にとって期限前償還条項の使用不使用は、経済環境や事業環境を考慮した経済合理性によって判断される。現状以上の更なる金利低下は考え難いが、金利が上昇していれば、低利付債に含み損が発生している可能性は高い。20年や30年後の担当者に、その処理や負担を押し付けて良いのか?投資家はより慎重に超長期の与信が意味することを考えておくべきだろう。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/19~2/23

2月初めに生じた株式・為替の変動については、単なるボラティリティ低下の反動による乱高下という見方が強い。そもそも各国中央銀行による資産買入れによって、市場機能が低下しており、特に日本においては、未だに中央銀行が国債・社債・株式ETF・J-REITと買入れを継続している。米国の景気回復を裏付けにした金融緩和の縮小が、長期金利の上昇を招き、結果として、他の資産の変動という形で影響が波及したと考えられる。1987年10月のブラックマンデーも、発端はドイツの金融市場と考えられており、世界的な株価の下落は、すぐに回復した。今回も2週間経たないうちに、ほぼ市場は落ち着きを取り戻したように見える。下がり過ぎたボラティリティの自律的反発と視ることで、現時点は市場が落ち着いたようである。日本はこれから決算期を迎える時期であり、株価や金融市場は大きく動かないと期待されるが、その分、新年度入りしてからの変動幅の大きさには留意しておきたい。

年度内で起債市場で募集が出来るのは、実質的には、3月10日過ぎまでである。12日の週の後半までと考えるのが妥当だろう。昨年の最終日は15日の水曜日であったし、今年も最大で16日の金曜日までであろう。もしかしたら、もう少し早いかもしれない。投資家の購入ニーズは根強くあるものの、金利もスプレッドも潰れている状況では、一般債に対する意欲は必ずしも強くない。特に、年度内の資金消化を意識することはなく、むしろ新年度入り以降の期間損益を考えるのではないか。利回りやスプレッドが高い場合には旧年度中でも購入するが、慌てないというのが基本的なスタンスだろう。

この週の起債に対する反応を見ると、投資家の購入意欲の低下が顕著に感じられる。スプレッドの乗った銘柄や、年限が長く利回りが1%を越える銘柄、さらには、日銀オペでの買入れが確実な3年債などは、引続き問題なく消化されるのだが、中途半端な年限でスプレッドにも妙味のない場合には、投資家の需要がさっと退いてしまうのである。

この週の起債の中では、起債頻度の少ない三菱ケミカルホールディングスの10年債・20年債やアコムの5年債は、マーケティング開始後に増額する展開となったが、それ以外はなかなか苦戦した模様である。特に、23日の金曜日に募集された九州電力の5年債及び20年債、東急不動産ホールディングスの10年債及び20年債、JFEホールディングスの5年債は、いずれも難航したようである。東急不動産ホールディングスの20年債は0.98%クーポンであり、1%の乗せていればもっと異なる展開となったのではなかろうか。果たしてこうした投資家の選別が年度内続くのか。3月中旬までの募集期間に動く案件はあまり多くなさそうであり、発行体と投資家の駆け引きが続くようである。

国内起債市場を斬る 起債評価:2/12~2/16

節分以降、前週からはじまった市場の変動が、多少なりとも起債市場にも影響を与えている。もっとも前年のこの時期も、民間企業の12月決算発表が終わったことなどから、公的セクターから民間企業へと起債の中心がシフトするタイミングである。2017年は、2月16日の木曜から民間セクターの起債が再開となり、翌金曜にかけて多くの募集が行われている。しかし、今年は、市場の不安定さもあって、16日の金曜日一発勝負である。

しかも、条件決定した顔触れを見ると、個人投資家向けの社債が四国電力とイオンモール、公共セクターが中日本高速道路とあって、純然たる機関投資家向けの社債となると、東京建物の3本立て、三協立山の初の起債、それにコンコルディアフィナンシャルグループの劣後債といったところになる。前年の木曜と金曜は、電源開発、ユニーファミリーマートホールディングス、三井不動産、セントラル硝子、リコーリース、協和エクシオ、伊藤園、首都高速道路、JR西日本、名古屋鉄道、三菱UFJホールディングスの個人投資家向け劣後債と多彩な顔触れであり、今年はやや物足りないといった感じが拭えない。

両年を通じるキーワードは、個人投資家向け、不動産、高速道路といったところだろうか。その中から不動産に注目してみると、2017年の2月に募集された三井不動産債は、日銀オペを意識した3年債250億円と20年債100億円の組み合わせであった。一方、今年の東京建物は、5年債100億円と10年債100億円に20年債150億円の三本立てである。20年債は当初50億円程度といわれていたのに、投資家のニーズが強く150億円まで増額されている。この20年債と5年債は良好な売行きであったようだが、10年債は苦戦したらしい。このネームで、10年の0.48%クーポン、国債対比+42bpsのスプレッドは必ずしも投資家の眼鏡には適わなかったようである。20年債は1.08%クーポンであり、クーポンが1%を越えたところが、良好な売行きを支えたものと考えられる。なお、同社の格付けは。JCRのA-格であり、三井不動産のAA格から見ると随分劣る。昨年の三井不動産の20年債は、0.929%で、1%に届かなかったのである。

売行きがもっとも良かったのは、コンコルディアフィナンシャルグループ(横浜銀行と東日本銀行の経営統合により誕生したフィナンシャルグループ)の期限付劣後債かもしれない。10年債であるが、5年経過時点での期限前償還が可能であり、クーポンが0.4%の固定から、6ヶ月円Libor+28bpsに変化する。通常は、期限前償還を前提とした5年債として考える債券であり、劣後プレミアムが上乗せになっている。金融機関の劣後債については、コールされない可能性は極めて低いことから、事業会社の劣後債とは異なり、早期償還前提での投資が現時点では可能だろう。

国内起債市場を斬る 旧正月特別号:なぜ、日本ではハイイールド債が根付かない?

市場というものを作り出すことは、誰にとっても容易でない。基本的には需要と供給がバランスするのが市場である。発行量の4割以上を日本銀行が保有している国債などは、既に正常な市場機能を喪失していると考えて良いだろう。多数の市場参加者が存在することは、健全な市場であることの一つの条件であろう。歴史的には、官公庁や取引所が市場の創設を誘導したこともある。解説された市場が一旦は取引が成立して成功したかに見えたとしても、市場創設のご祝儀が途絶えると、休息に萎んでしまう。健全な市場であるためには、参入障壁がないか低いこと等様々条件あるが、本質的には取引ニーズの存在することがもっとも重要な要素である。

日本にハイイールド債市場が根付かない理由としては、幾つかの要因が考えられる。投資家のほとんどは、仮に利回りが高くても、ハイイールド債を購入しようとしない。それは、信用力対比のスプレッドが十分にないと考えられているだけでなく、ハイイールド債の保有コストが小さくないからである。金融庁の監督下にある投資家は、いわゆる投資適格に満たない社債を保有している場合には、その保有を正当化し非分類とするための自己査定手続きが必要になる。その手続きを行うための手間やコストに見合うスプレッドが必要になるため、ハイイールド債を購入するために必要なスプレッドは、信用力見合いを越えたものが必要になるのである。

しかし、こうした手間の議論は間接的な要因でしかない。根本的な要因は、ハイイールドに相当する信用力の企業に対しては、融資金融機関による融資が資金ニーズを満たしているからで、敢えて社債を発行するまでもないと考えられるのである。つまり、想定される発行体にハイイールド債を募集する必要性がないのである。つまり需要と供給が存在しなければ、市場は成り立たないのである。

仮に官公庁や取引所は旗を振っても、ハイイールド債市場は育たないだろう。それは、日本証券業協会が10年近く努力しても、ほとんど何らの変化が見られないことで容易に理解できよう。ただし、官公庁の旗の振り方によっては、市場の活性化に誘導する方策はある。すなわち、金融機関の低信用力企業に対する融資について、ハイイールド債同様のコストを必要とするような施策を行うとか、不十分なスプレッドの貸付に対してペナルティを課すとかである。つまり、企業も銀行もが融資に依存できないようにするのである。ところが、日本の低信用力企業に対する融資問題の背景には、更に、政府系金融機関による融資の存在がある。民間金融機関は率先して低利融資を実行しているのではなく、競争によってやむを得ず低利融資を強いられている可能性もある。

こうして考えると、日本にハイイールド債が根付かないのは、単に特定の誰かによるものではなく、市場構造全体の問題である可能性が高い。時間はかかるかもしれないが、複数の要因を少しずつ解きほぐして行けば、欧米並みのハイイールド市場の創設も、夢ではないと期待する。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/29~2/2

12月四半期末決算の発表シーズン迎え、起債は細々である。それでも、2月に入ると動きが多少増えて来た。折しも、米国株式の暴落、乱高下で、決算を控えた国内投資家も揺れている。年度末まで2ヶ月を切ったことで、発行体も投資家も当初計画の遂行を意識する時間帯である。特に、公共セクターは予算消化に血道(ちみち)を挙げることが想定される。四半期ごとの調達計画を策定していたならば、3月中旬までの募集可能期間に動かなければならない。今の時間帯は、年度末までの募集に向けた最後の準備期間である。

10年長期国債の入札が行われ、米債の金利上昇を受けて日本の中期国債利回りも上昇する中で、日銀による7ヶ月ぶりの指値オペ実施という相対的に不安定な相場付きであったが、わずかながらも債券の募集が行われている。1月末に社債を募集したのが、THKである。同社は機会部品メーカーであり、最終消費者には馴染みが薄い。今回募集されたのは、第11回5年債と第12回7年債の各100億円であった。希少性のあるメーカーの社債ということで、順調に消化されたようである。他に起債がないという状況は、売行きに間違いなく貢献するはずである。

カレンダーが2月に替わると、阪神高速道路と首都高速道路の二大都市圏の高速道路運営会社が社債を募集している。前者は3年債100億円で、後者は5年債400億円である。いずれの債券も日本高速道路保有・債務返済機構の重畳的債務引受条項が付されており、予定通りに債務負担が移行するならば、日本国債と同程度の信用力が期待できるものである。ただし、格付けに関しては、複数格付を取得している場合の意識からJCRのAAA格を取得した首都高速道路と、R&IのAA+格のみを取得している阪神高速道路で対応が異なるのである。

2月に入って社債を募集したのは、三井住友ファイナンス&リースである。10年債100億円を募集している。業種特性を考えると、やや年限としては長いのであるが、国債対比+35bpsのスプレッドで問題なく消化されたようである。これも起債閑散のためなのか、三井住友フィナンシャルグループのサポートを期待したものなのか。

2月の起債は財投機関債などの公共セクターがまず動き、その後から、民間お社債が追随する展開になりそうだ。日米の株式市場の波乱を受け、日米の金利水準も安定しない可能性がある。タイミングによっては、高めの利回りが得られる状況があるのかもしれない。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/22~1/26

予想はしていたが、起債がばったりと止まった。地方公共団体金融機構のFLIP債が2本、日本高速道路保有・債務返済機構の財投機関債が1本、それに社債が1本といったロットである。地方公共団体金融機構債もFLIPにしては多めとなる各々100億円以上のロットであったが、それでも4本の総合計は530億円に過ぎない。まあ、細々と暫く起債の見られる展開が続くことになるだろう。

唯一の民間セクターの起債は、明治ホールディングスによる5年債であった。明治製薬と明治乳業は元来同根であったが、持株会社設立による経営統合は2009年のことであった。傘下には、事業再編によって食品事業の明治、薬品事業のMeiji Seikaファルマの二つが中核の事業子会社である。前者の食品については、チョコレートや牛乳、ヨーグルトといったところが容易に浮かぶだろう。なお、歴史的な経緯から、うがい薬(かつては“イソジン”ブランドであったが、2016年に商標権を持つ米国の製薬会社とのライセンス契約を終了している)は、現在でも食品事業子会社の商品である。後者の薬品は、ジェネリックを含む医療用医薬品や農薬等が主力で家庭薬は取扱っていない。そのことも、うがい薬が食品事業の取扱いになっている理由なのだろう。

今回の起債は5年債の第8回債である。必ずしも頻繁に起債する発行体ではないし、食品事業を通じて消費者への知名度も高く事業の安定性に対する信頼も強い。格付けはJCRのA+格であり、まずまずの信用評価を得ていると言って良いだろう。投資家の強いニーズを集めて順調に消化した模様である。知名度の高さに加えて、食品事業という安定基盤を持つことが高く評価されたようである。しかし、食品にしても医薬品にしても、ヘッドラインリスクや風評リスクに対しては弱い。事前の調査で萌芽を感じられるようであれば、投資は見送るべきであるが、近年の歴史を見ると、まったく予想されていなかったことが生じることも珍しくない。投資金額は抑え気味にしておくべきだろう。風評リスク等はコーポレートリスクであり、同発行体の別の回号を持っていても、影響が及ぶのであるから、年限の分散には限界がありそうだ。

当面、起債市場は寂しい展開が続くと思われる。年度内の募集可能年限があと一ヶ月になった頃くらいから、展開も変わって来るのだろう。足元では、間もなく2月に入ることもあって、財投機関債などの公的優性の時間がもう1~2週間程度続くものと考えられる。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/15~1/19

このタイミングでの起債は、なかなか多くならない。第4四半期の頭に募集するという起債もあるが、これから12月末決算の発表タイミングや年度内の実質的な起債募集時期が3月頭までということもあって、むしろ市場の様子を探るべき時間帯である。それでも、まず動くのは、ノンバンクや電力といった顔触れであり、この週はプチ起債集中となったが、なかなか募集の続く案件は多くないようである。

この週の起債をセクター別に見ると、ノンバンクがリコーリースの3本立て計250億円に、JA三井リースの100億円とオリエントコーポレーションの3本立て計300億円で、全部で650億円に上る。次に、電力は中国電力の100億円、九州電力の100億円、関西電力の300億円、東京電力パワーグリッドの2本立て計1,000億円で、合計1,500億円と、電力連合軍が最大勢力である。他にも、鉄道関連が、JR東日本の4本立て計400億円、近鉄グループホールディングスの2本立て計200億円で、合計600億円と二つの発行体ながら大きな金額となる。また、公共債も多く、地方公共団体金融機構の2本立て計250億円に、東日本高速道路の2本立て900億円、日本学生支援機構の300億円と、合計で1,450億円と大きな金額になっている。他には、住友商事の15年債やヒューリックの劣後債の他、王子ホールディングスの2本立ても募集されている。

これらの中で、売行きの良くなかった銘柄の共通点を挙げると、超長期社債ということになろう。ただし、JR東日本の30年債と40年債は問題なく消化した模様である。いずれもクーポンが1%を越えていることも売行きに貢献したことだろう。ところが、同じJR東日本の社債でも20年債は、0.675%クーポンの国債対比+8bpsの条件では売れなかったのである。また、中国電力の20年債は国債対比+21bpsの0.8%クーポンであったが、売行き不調であったようである。更に、住友商事の15年債も国債対比+33bpsの0.656%クーポンで売れなかったようである。

現在の市場の雰囲気では、超長期の11年以上20年程度の年限については、スプレッドがしっかり乗らない限り、直利1%を超えないので売れない可能性が高く、また、スプレッドがあまりに乗るような信用度の低い銘柄については、現実超長期の起債は難しい。少なくともセカンダリー対比や類似銘柄対比で割高なスプレッドでは、投資家は慎重なスタンスを変えてこない状況である。ベースとなる国債の利回りが上昇しない限り、暫くはこういった展開が続くものと思われる。

国内起債市場を斬る 起債評価:1/8~1/12

今年も新年の起債のスタートは、電鉄会社の個人向けからというパターンである。かつては、電力会社とその年の最初を競っていた記憶もあるが、東日本大震災以降は、電鉄会社の個人向けが初端というのが定着している。既に1月5日という年初第2営業日から、東武鉄道は個人向け3年債を条件決定しており、1月11日には小田急電鉄が同じ3年債で続いている。どちらも募集期間は1月30日までと設定されているが、12月までに出たボーナス狙いの起債と考えて良いだろう。預金金利がほとんどつかない中では、20%の利子源泉課税を考慮しても、3年物社債の利子は魅力的である。格付けがA(JCR)格の東武鉄道は0.16%で、AA-(JCR)格の小田急電鉄は0.11%で条件決定されている。地域住民にとっては馴染みの存在であり、事業の安定性を考えると投資妙味は高い。

それ以外の債券はまだ動きが鈍い。起債観測は色々と上がっているが、本格的な動きはこれからだろう。条件決定した銘柄としては、日本政策投資銀行の3本立て財投機関債、住宅金融支援機構の2本立て財投機関債に加えて、ようやく三菱UFJリースの2本立て社債が加わったというところである。やや日銀の金融政策の先行きに着いて懸念が高まり、10年金利が不安定になりつつある中であるが、二つの財投機関債は10年債がいずれも国債対比+18.5bpsのスプレッドで条件決定されている。同日に募集されており、クーポンも0.26%で揃っている。前年1月に募集された両発行体の10年債はいずれも国債対比+15bpsで条件決定されており、1年前に比べるとややスプレッドは開いている。もっとも12月に募集された住宅金融支援機構の10年債は国債対比+18bpsであり、年が変わって大きくスプレッドに変化があったとも見えない。

社債で唯一(日本政策投資銀行債は会社法上の社債であるが、財政投融資計画に基づく起債であるため、財投機関債と分類される)募集されたのが、三菱UFJリースの3年債及び10年債各100億円である。3年債は言うまでもなく日銀オペ見合いの起債であり、0.08%の条件で順調に消化されている。10年債は0.455%のクーポンとなっており、同日に募集された2本の財投機関債よりも、20bps近くスプレッドが厚い。同社の格付けはR&IのA+格及びJCRのAA-格である。政府サポートの考え方次第であるが、格付けだけを見ると厚いスプレッドと言って良いだろう。10年債も順調に消化された模様である。

国内起債市場を斬る 新年特別号:2018年の起債市場に対する展望

今年の起債市場を展望すると、言うまでもなく厳然とした事実が立ちはだかる。一つには、社債を中心とする一般債のプライシングの基礎が「国債利回り+α」であるように、基準となる国債利回りの水準である。利回りは需要と供給による価格メカニズムで決定される物であるから、需要者である投資家と供給者である発行体の両者の状況が影響する。国債の発行体は、政府財務省であるから、来年度の国債発行計画を見ると、今年度の補正計画ベース対比では6兆円の減少である。実際に市中に流されるカレンダーベースの市中発行額で見ると、7.1兆円の減少となる。金額では、5年利付国債の2.4兆円減少が大きいものの、減少率では40年債の2割減、30年債の12.5%減が大きく影響するだろう。流動性供給入札が逆に15.6%増とされており、流動性供給入札の運営次第では、超長期ゾーンの水準が変わる可能性もある。

国債の需要者としては、発行量の4割以上を保有する日本銀行の買入れ動向に注目が集まる。既に株式市場もJ-REIT市場も、日本銀行の買入れ次第で市場が左右される状況になっており、国債市場も同様である。日本銀行は既に『年間で国債保有残高が80兆円増加するように市中から国債を購入する』という方針を反故にしており、現状では60兆円程度しか残高の増加しないペースになっている。したがって、方針変更を明示しない限り、買入れペースの更なる減少は難しいだろう。現在の日本銀行の金融緩和は、安定した2%の物価上昇が実現できるまで縮小するのが難しい。基本線としては、日銀による買入れが維持されると考えるならば、需要の変化は期待し難い。結果として、国債利回りは供給減少と需要増加の結果であるから、価格上昇つまり低下する方向となる。

日本銀行以外の国債投資家について影響は大きなものがないと考えられるが、消費税率引上げの見直し等から財政規律の緩みを懸念されて、国債に対する格付けを見直される場合には、様々な影響の発生が懸念される。国内資金で国債の9割が消化されているために、国債に対する直接の需要変化は見込まれないが、格付け低下による担保掛目の変化やシーリング効果による金融機関等の格付け低下で、直接間接の変化が発生する可能性がある。格付けの見直しは事前の予測が難しく、景気が良好な中では生じない可能性も高いが、リスク・シナリオとしての意識は頭の片隅に残しておきたい。

第二の要素は、一般債の利回りにおいて+αの部分であるスプレッドの見通しである。投資家の一般債購入ニーズは強い。特に、国債がマイナス利回りになっている年限では、プラス利回りを維持する一般債は、満期保有を前提とする投資家の購入対象であり続ける。そのため、スプレッドに対する需要は根強い。一方で、供給サイド、つまり企業等の資金調達ニーズはどうか。残念ながら、銀行の金余り感が強いだけでなく、企業自身が豊富なキャッシュを抱え込んでいる。そのため、積極的に債券を発行して資金調達を行おうとする発行体が多いとは思えない。また、日本銀行の金融緩和執政が変わらない限り、先行きの金利水準が上昇するとは思えないことから、企業等が金利先高感から資金調達を急ぐという状況も想定できない。結局のところ、スプレッドに関しても、引続き低水準であるとしか見通すことは出来ないのである。

結果として、一般債に対する投資妙味は決して高くなることはないだろう。状況に変化のない限り、淡々とした発行と消化が続くことになるだろう。もし市場に変化があるとするならば、景況感の改善による金利先高感よりも、日本銀行の緩和方針に関する変化が先に来るだろう。つまり、市中の環境変化より先に、日本銀行は動くだろう。日本銀行執行部の構成変化や方針変化によって、債券市場に影響がどう及ぶかに着目するのが、2018年の起債市場になるのではないか。年末に掲げた2018年の見通しを、ここで変更する必要性は考えられず、敢えて詳しく述べて、今年の起債市場に対する展望としたい。