国内起債市場を斬る 2018年度半期末特別号:格付けのタイムホライズンと超長期債

この9月に募集された民間企業の超長期社債(満期一括償還に限る)を順に挙げると、日本たばこ20年債、名古屋鉄道20年債、住友商事20年債、阪急阪神ホールディングス20年債、電源開発20年債、相鉄ホールディングス15年債、日本航空20年債、JR東日本20年債・30年債・40年債、光通信20年債といった顔触れになる。超長期債に投資するメリットは、何と言っても利回りの高さにある。イールドカーブが順イールド形状になっている限り、国債利回りは年限の長い方が高い。社債の場合には、上乗せのスプレッドの水準によって逆転する可能性もある(例としては、JR東日本40年債のクーポン1.246%に対し、光通信20年債は2.12%クーポンである)。

超長期債に投資する際に投資家が考えなければならないのは、投資によって負うリスクである。近似的には、価格変動リスクをデュレーションで、信用リスクを格付けで測るというのが一般的な投資家ではなかろうか。前者に関しては、現在のような低金利が大きく変動した場合には、デュレーションの計測だけでは不十分である。デュレーションだけでは近似しきれない金利変動の影響については、コンベキシティを考慮すべきであろう。しかし、もっと大きな問題は信用リスクを評価する際の格付け利用にある。

格付けに関しては、超長期債の抱える信用リスクを適切に示す指標ではないと断言するのは、言い過ぎだろうか。そもそも格付けとは、一民間企業である格付会社が発行体及び当該債券に対して付した信用度合いの評価である。監督官庁に届出しており、定期的な検査を受けていることから、専門的な評価機関であることを否定しないが、果たして格付けのタイムホライズンは、どの程度の期間だろうか。

一般的に企業が作成している中期計画は、3年~5年といったところだろう。それに、各業種の専門アナリストが長期的な当該業界の事業環境と、当該企業の先行きを推計しても、10年以上の先を見通すことは不可能だろう。9月に超長期債を募集した企業の中でも、日本航空が経営危機に陥り社債をデフォルトしたのは2010年のことであり、まだ、10年も経過していないのである。幾ら公的資金による支援があったとは言え、破綻して10年以内の企業が20年債を募集しているのは、奇異な姿であろう。結局のところ、超長期債の信用リスク評価においては、格付けは役に立たないということを肝に銘じるべきである。

超長期債の投資に際しては、格付けを見るだけでなく、その先の保有期間に対する業界及び発行企業の分析を、個々の投資家が真剣に実施して安全という判断を下してから投資を実行しなければ、投資家としてのスチュワードシップに反すると言っても良いだろう。個別企業の遠い将来を予想するのは難しく、ウェイトとしては業界分析と相対的な位置付けが主体にならざるを得ない。結局のところ、将来の業界像を比較的容易に推測できるのが、規制業種であり、電力・ガス・鉄道といったところが、超長期債の主な発行業種になるのは、自然のことなのである。それ以外の業種については、真摯に20年後のその企業がどういう状況にあるかを考えて投資すべきである。また、将来の20年先が難しいのなら、20年前がどのような会社であったかを考えることにも意味があろう。年限の長さはデュレーションの長さに繋がり、結果として価格変動の大きさをもたらす。それほど、超長期債投資におけるクレジットリスクを初めとするリスクファクターの分析と投資判断は、容易なものではないのである。

国内起債市場を斬る 起債評価:9/18~9/21

今年の9月は、敬老の日と翌週の秋分の日と、三連休が二度続いた。実質的な上期の起債シーズンは、14日で終わったと思ったが、この週を狙って案件が入り込んできた。募集された一つは、中日本高速道路の第74回4年債700億円である。区分としては社債になるが、純粋な民間事業会社の社債ではなく、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受条項が付されており、実質的には、財投機関債と同等の信用力を有していると考えられている。高速道路運営会社を破綻させることは現実的でないし、いざという時は政府に夜支援が期待できるのであるが、歩的な債務保証が付されておらず、「暗黙の政府保証」に留まると解される。なお、債務が日本高速道路保有・債務返済機構に順調に移管されているかどうかを確認することも必要であり、「暗黙の政府保証」を期待するには多くの作業前提を要する。

もう一つは、地方公共団体金融機構のFLIP債である。四半期の最初の月に複数のFLIPに基づく債券の募集されることが多いが、今回は四半期末に1銘柄のみという変則的な募集であった。取扱いは、三菱UFJモルガンスタンレー証券であり、19年債50億円が募集された。FLIPに基づく地方公共団体金融機構債は、公募とされているものの、ほとんどが30億円から50億円での募集が多く、金額面からも、また、募集の状況からも限りなく私募に近い位置付けとされる。ただし、地方公共団体金融機構は、地方公務員共済組合連合会等の公的共済団体向けに縁故債を発行しており、これらは完全な私募とされている。FLIP債については、日本証券業協会から公社債店頭売買参考統計値も公表されている。

実質的に上期の債券市場の募集は終了したが、募集直前に北海道胆振東部地震の発生で、募集を見送られた北海道電力の電力債は、今後に被るであろう大きな影響が懸念される。募集直前に大きな環境変化が生じたために、募集を延期したのは適切な判断であったが、やや単なる地震の影響から数ヶ月の募集延期ということにならない可能性もある。地震からの復旧・復興に時間がかかることだけでなく、道内全域がブラックアウトしたことで、北海道電力の経営に与える影響は小さくない。特に、苫東厚真火力発電所が直接被った被害だけでなく、同発電所への一極集中によるリスクが懸念されるようになっている。背景には、泊原子力発電所が再稼動できていないこともあるが、苫東厚真火力発電所の使用燃料は石炭である。石炭火力発電に対して環境面から投融資を控える機関投資家も増えてきており、今後の北海道電力は、財務面における収支の点のみならず、ビジネスモデルに対する観点からも、見直しが必要になって来る可能性が高い。

国内起債市場を斬る 起債評価:9/10~9/14

実質的に上期の起債シーズンの最終週である。しかも、最終営業日である金曜日に向けて、案件は集中する。民間の事業債だけ見ても、水曜日は2社計4本で500億円が募集され、木曜日は4社計6本で900億円と増え、この週の金曜日は6社計13本で計1,900億円と倍々の増加である。一つの回号あたりで見ると、500億円というT&Dホールディングスの劣後債が大きいものの、それ以外にも50億円といった実質的に最低金額に近い募集も少なからず見られている。基本的には、1回号100億円での募集が多い。

募集年限では、相変わらず超長期が少なからず見られる。電源開発の20年債100億円、T&Dホールディングスの劣後債(30年NC10年)500億円、光通信の20年債250億円、相鉄ホールディングスの15年債100億円、東日本旅客鉄道の20年債100億円・30年債200億円・40年債150億円、日本航空の20年債100億円といった顔触れが超長期債の募集であった。電力や鉄道といった安定的な業種については超長期債の募集が適切と考えられるのでるが、果たして光通信の20年債はどうか。決して社名にあるような通信事業が主体ではなく、携帯電話ショップ・中小企業向けOA機器や通信回線等の取次ぎ、保険代理店といった複合企業である。しかし、超長期の与信に適している企業とは思えない。確かに2.12%クーポンは利回りの絶対水準として魅力的なのであるが、20年前からの光通信の経営状況の推移を思い出すべきなのである。

起債ラッシュの中で、あまり起債の多くないセクターが動いたことにも着目しておきたい。特に、メーカーによる起債が幾つか見られている。NECは5年債300億円・7年債と10年債各100億円で計500億円を募集し、出光興産は7年債と10年債各100億円、日立造船は3年債50億円と7年債100億円、サンケン電気は3年債と7年債各50億円、シチズンは5年債100億円と複数のメーカーが社債を募集している。ノンバンクや電力、鉄道といった機敏に動くセクターと異なって、動きの鈍いメーカーが社債募集に動いたことも上期末のタイミングという一現象の特徴であろう。

最後に、格付けの観点からは、BBBゾーンの起債が複数見られることにも留意しておきたい。アイフルがBBBゾーンに満たない私募債を募集したことが報じられているが、公募債でも、スプリットレーティングの片方を含むと、光通信、日立造船、サンケン電気、阪和興業といった発行体がBBBゾーンの起債である。低格付け債に対する投資家の姿勢は必ずしも大きくは変化していないが、利回りの絶対水準を求める動きは根強く残っているようだ。

国内起債市場を斬る 起債評価:9/3~9/7

起債可能な時期は決して短いわけではない。しかし、週初めの月曜日はマーケットの状況確認や投資家のニーズ調査もあって、募集には向いていないとされる。また、国債の入札は火曜日や木曜日に設定されていることが多い。国債の募集は必ずしも社債等の募集に関係ないのであるが、募集される年限の入札が行なわれる時は、水準確認の意味もあって、社債等の募集は見送られることが普通である。また、日銀の量的質的金融緩和によって、証券会社の債券部門も近年は収益性が低下しているために人員を削られている。その結果、国債の入札に注力するため、入札日に社債の募集を躊躇する傾向が見られる。利付国債の年限が増え、流動性供給入札が毎月複数回行なわれており、日銀と財務省の双方から社債の募集日が圧迫されていると見ることができるのかもしれない。

この週に募集された社債(財投機関債を除く)を本数で見ると、火曜日が3本、水曜日が3本、木曜日はゼロ、金曜が14本と偏っている。一方で、募集金額で見ると、火曜日が1,000億円、水曜日が750億円、金曜日が2,080億円と偏りは是正される。これは火曜日に、日本たばこが3本で合計1,000億円募集したためである。もっとも一本で500億円募集した銘柄が、水曜日の三井トラストホールディングス、金曜日の東京電力パワーグリッドとあったために、金額の偏りが是正されている。1回号が100億円以下で募集された社債が、金曜日には9本もあり、本数と金額のアンバランスが生じている。

火曜日に3本で合計1,000億円募集した日本たばこの社債は、売れ残ったとされている。利回りの低い5年債を600億円としたこともあり、また、総額1,000億円という大型起債にしては全般的に利回りが足らなかったとされる。しかも、日本たばこの事業領域については、食品や薬品についての懸念は大きくないが、メインのタバコに関しては、先進国で軒並み抑制傾向が強くなる中、買収等で海外展開を強めていることは、リスク要因と考えられる。これから東京オリンピックに向けて、東京都内の飲食店におけるタバコ規制が強化されることが予定されており、日本たばこが活路を見出そうとしている電子タバコも、先行きは明るくない。昔ながらの一般担保付社債として募集されているが、それだけでは、投資家の懸念を払拭することは出来ないようである。電力会社のように、停電したら生活に大きな影響が出るような企業とは異なるのである。

因みに、日本たばこが毎年実施している喫煙者率調査によると、2017年の日本人の平均喫煙率は男性が28.2%、女性は9.0%だったそうで、男性の喫煙率はピーク時(1966年)の83.7%から半世紀を経て、約3分の1まで減少したが、世界的に見るとまだ決して低いとは言えない水準であり、WHOの「世界保健統計2016」では、日本の男性喫煙率は128カ国中60位で、G7各国の中では最も喫煙率が高かったとのことである。(2018年5月22日時事)

次の週末が三連休となることもあり、社債等の募集は9月10日の週に多く集まるようである。起債観測は、電力や運輸だけでなく、メーカーも幾つか上がっており、週後半に向けて盛り上がるようだ。なお、北海道電力の起債見送りは地震によるものであるが、それ以外にも、金利水準等の環境変化から起債を延期する動きが見られている。足元だけでなく、先行きの金利水準を慎重に見極めようとしているようである。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/27~8/31

上期末の起債ラッシュがはじまっている。特に、週後半の集中度合いは、なかなかのものである。金額面では、野村ホールディングスのTLAC債が1,000億円を募集しているが、本数ではノンバンクや電力、陸運が稼いでいる。

中でも、陸運は、鉄道中心であるが、やや長めの年限で多く募集されている。日立物流はレア物でありながら、7年債・10年債・20年債と各100億円を募集した。日立製作所という元々の親会社(現在の出資比率約3割)を盛っている強みに加え、佐川急便の持株会社であるSGホールディングスからも約3割の出資を受けており、また、福山通運とも提携していることで、決して日立グループ依存ではない。鉄道以外の陸運業で20年債というのは珍しい年限だが、事業基盤の強さが評価されたものと考えられる。

日立物流以外の陸運は、いずれも鉄道で、京成電鉄の10年債及び20年債各100億円、西日本鉄道が10年債100億円を募集しており、安定した業種特性が年限に強く反映されている。両社とも格付けはJCRのA+格であり、揃って募集した10年債は国債対比スプレッド+29bpsとクーポン0.395%で同じ水準になっている。

電力では、中国電力が10年債及び19年債各100億円と関西電力が5年債と10年債各300億円を募集している。東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故、原子力発電所の運転停止といった一連のイベントの影響を受けた電力会社に対するネガティブな評価は、徐々に薄らいで来ており、起債額が大きくなり、年限も超長期債の募集が可能になってきている。それでも、中国電力と関西電力の格付けは、R&IではA+格で横並びであるが、JCRではAA格とAA-格で1ノッチ差があり、10年債のクーポン及び国債対比スプレッドは7bpsほど関西電力が高くなっている。これは関西電力の原発依存度が高いことを反映したと考えられるが、募集金額の大きさも影響している可能性がある。

この週の社債募集は、割と業種で年限が揃っているように見える。業種によって、適切と考えられる調達年限が変わるためもあるが、本来的には既存債務の償還スケジュールなどから調達年限が異なる可能性も少なくない。この種に社債を募集したノンバンクはリコーリースとJA三井リースで、どちらもリース会社であり、募集年限は、3年債と5年債各100億円と同じであった。格付けが、リコーリースがAA-(JCR)格と高く、JA三井リースはA-(R&I)格及びA(JCR)格と2ノッチ低い評価であるが、3年債は同じ0.05%クーポンで募集され、5年債のクーポンは0.19%と0.2%で1bpしか差は付いていない。3年債は日本銀行による社債買い入れオペの対象となることが期待されており、そのために格付けの差がクーポンに反映されなかったと考えられる。これも強力な異次元の金融緩和によって生じた市場の副作用と見ることができよう。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/20~8/24

旧盆の休みが終わると、ここから9月中旬までは起債集中シーズンとなる。3月決算企業の決算発表等イベントがなく、発行体の条件決定は比較的自由であり、投資家も上期末を意識しながら、ポジションの積上げや購入計画の遂行を図る時間帯である。需要と供給のマッチし易いタイミングと言って良いだろう。7月前後の市場にあった先行きの金利上昇懸念は、日銀によってイールドカーブコントロールが微修正されたために収束してしまった。実際のところ、8月中旬の10年国債利回りを見ても、ほぼ0.1%前後の水準で安定しており、0.1%を超えることがあるのは以前こそ異なるものの、結果として大きく超えることはない。市場の沈静化を受けて、投資家も社債を買い易くなっているだろうし、発行体も債券の募集をし易い環境なってきている。

既に17日から財投機関債の募集は開始されていたが、その後も22日には財投機関債の募集が行われている。これらはいずれも財投機関債というだけでなく、20年・30年・40年といった超長期債の募集であった。どんなに金利水準が欲しいと言っても、企業の寿命が30年程度(日本の企業の中には、千年単位のものもあるが)と見られている中では、超長期債の投資対象は自ずと限定される。自然な流れとしても財投機関債等の公的セクターは、超長期債の中でも投資し易いものとなる。この時期に再開された起債市場の募集が超長期の財投機関債からはじまるというのも、良くも悪くも象徴的である。

この週の起債は、その後、民間企業によるものに続くのであるが、典型的な業種と考えられるノンバンクや電力・ガス、鉄道だけでなく、メーカーまでが早々と募集に動いたのが珍しい。超長期債を募集できるのは、公共セクターを除くと実質的に電力・ガスに鉄道と業種が限られている。JR西日本は30年債と40年債の二本立てを募集しており、小田急電鉄も20年債、東邦ガスは30年債を募集している。一方、九州電力は5年債と10年債の二本立てで、メーカーなどと同じような年限を選択している。

これら以外では、東洋紡とニチレイが奇しくも同じ7年債を募集している。格付けはJCRによって同じA格を取得しているが、クーポンは東洋紡が0.29%とニチレイより4bps高い利回りになっている。確かに一般消費者に対する知名度といえば、ニチレイの方に馴染みがあると考えられるが、ニチレイはみずほ証券の事務主幹事、他三菱UFJモルガンスタンレー証券・野村證券・SMBC日興証券と3社幹事なのに対し、東洋紡がSMBC日興証券の単独主幹事という構造格差に起因するものもあるかもしれない。東急不動産ホールディングスも5年債と10年債という無難な二本立てであった。不動産業種という面では、これくらいの年限が適切なのかもしれない。

国内起債市場を斬る 夏季特別号:格付け変更の明暗

アベノミクス効果もあり、近年の企業業績は概ね良好である。先月公表された日銀短観を見ても、大企業製造業の業況DIは21で、非製造業のDIは24とまずまずの数値となっている。バブル経済崩壊以降で業況判断DIのピークを見ると、製造業では2004年9月調査の26、非製造業では2006年12月調査から2007年6月調査の22となっている。つまり、大企業にとって現在の業況は、ほぼ陽の極に近い状態となっている。消費者の生活実感からはかなり乖離があるが、少なくとも大企業にとってネガティブに感じる要素は多くないようである。

こうした良好な業況にあると、企業に対する格付けの変更は概ね格上げが中心となり、格下げは個別事情のある企業に限られるということになる。今年度に入ってからの企業発行体格付け変更を、まず、R&Iによるアクションから見て行こう。格上げになった企業はキッコーマン(A+へ)、西松建設(A-へ)、戸田建設(A-へ)、安藤・間(A-へ)、東芝(BB+へ)、プレス工業(BBB+へ)、マツモトキヨシ(Aへ)、三菱自動車工業(BBBへ)、五洋建設(A-へ)、アルフレッサHD(A+へ)、メディパルHD(A+へ)、オリンパス(Aへ)、ソニー(Aへ)、雪印メグミルク(A-へ)、JXTGHD(A+へ)、昭和シェル石油(Aへ)と計16社見られた。東芝を除いて、いずれも1ノッチの格上げであった。こういった環境での格下げは、京都銀行(Aへ)の1社のみでこの事象が目立っている。金利低下の中で積極的な基盤拡大を図っているため、収益力の改善に時間を要するというのが格下げの理由である。地方銀行の経営環境の厳しさは、単に金融庁からの指摘だけに留まらず、様々な角度から浮き彫りにされているようである。

次に、JCRのアクションを見ると、三十三FG(2018年4月2日三重県を本拠とする三重銀行と第三銀行が統合、A-へ)・第三銀行(A-へ)、東京TYFG(2018年5月1日東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京3行が合併して「きらぼし銀行」としてスタート、A-へ)、東京都民銀行(A-へ)・八千代銀行(A-へ)・新銀行東京(A-へ)、リンテック(A+へ)、オカムラ(Aへ)、タカラトミー(BBBへ)、清水建設(AA-pへ)、大林組(AA-へ)、大成建設(AA-へ)、新生証券(A-へ)、昭和リース(A-へ)、新生銀行(A-へ)、IBJL東芝リース(A-へ)、興銀リース(A-へ)、セゾン自動車火災(AAへ)、長谷工コーポレーション(Aへ)、ロイヤルHD(BBB+へ)、フェローテックHD(BBB-へ)、森永製菓(Aへ)、ダイキン工業(AAへ)、中部飼料(A-へ)と数多く見られた。ただし、お気づきのとおり経営統合によるものも少なくない。一方で格下げは、三十三FG設立による経営統合の影響で三重銀行(A-へ)がその憂き目に遭った。

実際に格上げの件数が圧倒的に多いことが確認されたが、業種としては建設関連が目立っており、これも足元の経済実態を反映しているように思える。R&Iによる京都銀行の格下げに端的に現れているように、また、JCRの格付けでも地銀の再編による変更が見られており、地域金融機関の経営の厳しさは顕著であり、今後もこれにつづくアクションが見られる可能性を秘めている。

国内起債市場を斬る 起債評価:8/6~8/10

広島の原爆祈念日から旧盆休みに至るこの時期は、多くの起債は期待できない週である。それでも、前週に長期国債の入札が行われた後、公募地方債の条件決定が行われる期間であって、市場関係者も完全に休みとはならない時間帯である。週央からは財投機関債等公共セクターの募集が行われ、10日の金曜日には社債の募集が行われたのである。

募集された公共債は、定例の銘柄とそれ以外に分類できる。基本的に毎月募集されているのが、住宅金融支援機構と地方公共団体金融機構である。前者は、概ね5年債と10年債を中心に、それ以外の年限も月によって募集するといった形である。8月は、5年債・10年債に30年債を募集している。今年度のこれまでの実績を見ると、4月は5年債・10年債・20年債、5月は5年債・10年債・30年債、6月は5年債・10年債・15年債、7月は5年債・10年債・20年債といった履歴である。超長期の募集年限を月ごとに変えているというところか。一方、地方公共団体金融機構の場合は、10年債250億円のみを募集している。同機構は、FLIPに基づく起債を除くと、10年債を毎月募集し、それ以外に5年債・20年債・30年債が組み合わされることもあるという形になっている。

必ずしも毎月募集しない公共セクターで8月に債券を募集したのが、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と都市再生機構である。前者は、基本的に2・5・8・11月と四半期に一回ほど複数年限の財投機関債を募集する発行体である。今回は、5年債・10年債・20年債の組み合わせで、計660億円とまとまった金額の募集となっている。また、後者も、四半期に一回2・6・8・11月に財投機関債を募集するのが過去のパターンであるが、今年度は発行予定額が増えたこともあって、5月に続いて40年債200億円を募集している。民営化がイメージされると、40年といった超長期の年限の与信は難しくなるが、足元では、復興支援等の観点から、かつて見られたような不要論は見られない。しかし、人口減少が進む中での都市再生機構の役割を考えると、事業内容の見直しは必須だろう。

社債を募集したのは、初ものの月島機械と森ビルである。いずれも10年債を募集しており、前者は50億円、後者は100億円と小額の募集である。一部の情報ベンダーでスプレッドの誤報も見られたが、単純な10年債同士なので、明らかであった。月島機械の格付けはBBB+(JCR)格であり、最初から10年債というのは、やや年限が長いか。一方で、森ビルは不動産業であり、ネガティブな見方も出来るが、人口減少の中での都心集約という意味では、都市再生機構よりも事業立地としては明るいかもしれない。それでも、もしもの時の公的支援は期待できないだろう。

国内起債市場を斬る 夏季特別号:日銀のYCC修正と起債市場

日本銀行は、7月終わりの金融政策決定会合で、既存の長短金利操作付量的質的金融緩和(YCC)の微修正を決定した。公表文のタイトルは「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」とされており、引続きの金融緩和姿勢を示している一方で、10年国債利回りの変動幅を「概ね±0.1%の幅から、上下その倍程度に変動し得ることを念頭に置く」としており、市場では金利上昇を容認したものと解している。現時点での理解はそれでよいと思われるが、一方で、変動幅を倍にしたことから、状況によっては、10年国債利回りがマイナス0.2%にまで下がることを認めているものと考えることができる。今年の後半以降、グローバルな景気後退等から再度の金融緩和が求められた際に、利下げ幅の存在する米国や、資産買入れの再拡大が可能な欧州と異なって、日本の場合には金融緩和の更なる余地は困難であった。それが、金利変動容認幅を拡大したことで、金融緩和の強化可能性を確保したのである。

今回の微修正では、10年国債利回りの変動幅拡大の他に、政策金利のフォワードガイダンス、政策金利残高の見直し、ETFの銘柄別買入れ額の見直しなどが決められており、社債の買入れについては、現在の買入ペースを維持するとする。しかし、今回行われたYCCの微修正が金融市場の副作用を意識したものであるならば、社債の買入れについても、見直してしかるべきだったのではないか。

日銀による社債の買入れは、残存3年以内の銘柄を流通市場から買入れることとしており、格付けはBBB以上とされている。その結果、新発の3年債のプライシングが明らかな異常水準になっているのである。特に、日銀はマイナス利回りでも社債を国債と同様に買入れるために、3年の新発社債のクーポンは0.001%などの極めて低廉な水準に設定される物が増えている。それらは一旦、引受けた証券会社から投資家に売却されるものの、すぐに証券会社によって買い戻され、証券会社は日銀オペに入れるのである。こうして投資家は社債を投資ではなく短期売買の対象にしているのである。思い起こせば、1985年前後の新規上場の公募転換社債を思い起こす。新規発行の転換社債を、傷んでいる特定金銭信託で購入して頂き、上場後他の特金と何度も媒介を交わして、暗黙の利益確保と売買高競争を公然と仕組んできた。現在行われているフローを見ても本来の社債投資でなく、日銀のオペが社債のディーリングを促しているのである。これを副作用と言わずとして何とする。

日銀は2%の安定的な物価上昇が実現できない限り、現在の枠組みでは、金融緩和を後退させることが容易でない。今回のYCCの微修正にしても、かつて大本営が撤退を転進と言い換えたと同じような表現変更であり、本音と建前の使い分けに腐心している。社債オペの見直しも直ぐに行われることはないだろう。果たしてその先に健全な社債市場はあるのだろうか。仮に2%の安定的な物価上昇が実現できても、社債市場のみならず、国債市場や株式市場を大きく歪めてしまっては、残った副作用が大き過ぎると考えられる。

国内起債市場を斬る 起債評価:7/23~7/27

本州以西の酷暑、西に向かう台風など、気象状況は例年と大きく異なるが、起債市場はあまり例年と変わるものがない。日銀の金融緩和見直しが意識されるために、10年国債利回りが不安定化し、日銀が指値オペで封じ込める展開であるが、一般債の募集には直接の影響が見られない。スプレッドプライシングのベースとなる利回りが上昇することで、起債コストは上昇したが、スプレッドの拡大ではないために、発行体の責任とはされないからである。あくまでも「市場の変動」によるためである。日本企業で一般的な、責任を問われないことが重要なのである。

起債市場の顔触れは、ノンバンクと財投機関債などの公的セクターである。後者は格付けが日本国債と同水準の物ばかりであり、消化に対する不安は小さい。特に、年限が短い場合には、国債を購入してもマイナス利回りしか得られないのに、高格付け債でもプラスもしくは出来上がりでゼロ%の債券となっているから、投資家は購入し易い。日本政策金融公庫の財投機関債は、2年債も3年債もクーポンは同じ0.001%である。発行単価が100.002円か100.001円かの違いである。もちろん資金使途が、2年債は国民一般向けであるのに対し、3年債は農林水産業者向けであるという違いはある。しかし、公庫の中で部門が異なるとは言っても、外部の債権者には対抗できない。対抗できるならば、財投改革は単なる数合わせによる特殊法人の統合でしかなくなってしまう。

ノンバンクの起債は、昭和リース5年債と三井住友ファイナンス&リースの4年債及び10年債である。前者は協和銀行傘下で設立され、現在は新生銀行グループに属す。後者は、沿革としては住友商事や住友銀行系のリース会社がスタートであるが、途中でさくら銀行系のリース会社も統合しており、こちらは三井住友銀行系と理解される。つまり、両社とも、銀行系リース会社である。事業環境や今後の日本経済の成長性を考えると、なかなか長期の与信は容易でないが、いざと言うときには銀行の支援が期待できることで、信用力の下支えを期待することができる。昭和リースの5年債のクーポンは0.25%であり、一方、前述の日本政策金融公庫の10年債は0.255%クーポンとほぼ同じ水準、後者の三井住友ファイナンス&リースの4年債は0.110%、10年債は0.410クーポンである。どちらがより魅力的な投資対象であろうか。

いよいよ今週は8月に入り、全ての小中学校も概ね夏休み、第100回全国高校野球選手権記念大会の代表校も出揃い、2日抽選、5日開幕となる。起債市場もほぼ案件が出尽くしており、そのまま旧盆の休みに突入するというのが例年のスケジュールである。