2月初めに生じた株式・為替の変動については、単なるボラティリティ低下の反動による乱高下という見方が強い。そもそも各国中央銀行による資産買入れによって、市場機能が低下しており、特に日本においては、未だに中央銀行が国債・社債・株式ETF・J-REITと買入れを継続している。米国の景気回復を裏付けにした金融緩和の縮小が、長期金利の上昇を招き、結果として、他の資産の変動という形で影響が波及したと考えられる。1987年10月のブラックマンデーも、発端はドイツの金融市場と考えられており、世界的な株価の下落は、すぐに回復した。今回も2週間経たないうちに、ほぼ市場は落ち着きを取り戻したように見える。下がり過ぎたボラティリティの自律的反発と視ることで、現時点は市場が落ち着いたようである。日本はこれから決算期を迎える時期であり、株価や金融市場は大きく動かないと期待されるが、その分、新年度入りしてからの変動幅の大きさには留意しておきたい。
年度内で起債市場で募集が出来るのは、実質的には、3月10日過ぎまでである。12日の週の後半までと考えるのが妥当だろう。昨年の最終日は15日の水曜日であったし、今年も最大で16日の金曜日までであろう。もしかしたら、もう少し早いかもしれない。投資家の購入ニーズは根強くあるものの、金利もスプレッドも潰れている状況では、一般債に対する意欲は必ずしも強くない。特に、年度内の資金消化を意識することはなく、むしろ新年度入り以降の期間損益を考えるのではないか。利回りやスプレッドが高い場合には旧年度中でも購入するが、慌てないというのが基本的なスタンスだろう。
この週の起債に対する反応を見ると、投資家の購入意欲の低下が顕著に感じられる。スプレッドの乗った銘柄や、年限が長く利回りが1%を越える銘柄、さらには、日銀オペでの買入れが確実な3年債などは、引続き問題なく消化されるのだが、中途半端な年限でスプレッドにも妙味のない場合には、投資家の需要がさっと退いてしまうのである。
この週の起債の中では、起債頻度の少ない三菱ケミカルホールディングスの10年債・20年債やアコムの5年債は、マーケティング開始後に増額する展開となったが、それ以外はなかなか苦戦した模様である。特に、23日の金曜日に募集された九州電力の5年債及び20年債、東急不動産ホールディングスの10年債及び20年債、JFEホールディングスの5年債は、いずれも難航したようである。東急不動産ホールディングスの20年債は0.98%クーポンであり、1%の乗せていればもっと異なる展開となったのではなかろうか。果たしてこうした投資家の選別が年度内続くのか。3月中旬までの募集期間に動く案件はあまり多くなさそうであり、発行体と投資家の駆け引きが続くようである。