国内起債市場を斬る 起債評価:6/11~6/15

株主総会シーズンが近付き、自然と起債の波は沈静化する。前週は起債金額が大きくなったが、打って変わって静かな市場である。決して日本銀行の金融政策決定会合を注視したというような展開ではない。民間の起債ではメーカーによるものが目立った。公的セクターでは、東日本高速道路が1年債をはじめて募集している。社債の歴史を振り返っても、珍しい年限選択である。償還年限に明確な理由のある際にしか募集されない。クーポンが0.001%で発行単価が100円00.1銭というオーバーパー発行であり、応募者利回りは0%となる。既に公的セクターの2年債ではこうした条件設定は珍しくないが、マイナス金利環境でしかお目にかかれない代物である。

メーカーの起債は、まず、三井化学が7年債100億円・10年債150億円・20年債100億円の計350億円を募集している。格付けはR&IのA-格とJCRのA格であり、あまり高過ぎないことが、人気を集める要素となっている。10年債と20年債は、当初の予定より増額されている。確かに、20年債のクーポンは0.9%であり、月初に募集された東北電力の20年債よりも高水準となっている。都市再生機構の30年債を越えるクーポン水準というのも、面白い条件設定である。

残りの2銘柄はいずれも5年債が募集されている。格付けは、花王がR&IのAA格と高水準で、YKKも同じくAA-格とほとんど負けていない水準である。前者は250億円で、後者は100億円を募集している。どちらも起債頻度は多くなく、前者が第5回債で後者が第12回債。YKKは非上場会社であるが、有価証券報告書を提出し、発行登録を利用して公募社債による資金調達を行っている。かつてはレアな存在であったが、近年は上場持株会社の傘下にある銀行等が公募社債を募集することも珍しくなく、非上場会社の社債も普通になった感がある。なお、YKKについては、株式非上場が方針であり、同社のサイトには” 現在、当社は、当社株式を証券取引所に上場する予定はありません。“と明記されている。

両社の5年債は、いずれも0.08%クーポンとされている。翌日に募集されたR&IのAA+格である東日本高速道路の5年債はクーポンが0.07%であり、あまり変わらない水準である。メーカー2社の社債は、同日に募集されたが、いずれも順調に投資家の需要を集め、問題なく消化されたようである。希少性のある銘柄が、タイミング良く募集された結果であろう。