国内起債市場を斬る 起債評価:7/9~7/13

関東甲信の例年にない早い梅雨明けから、西日本を中心とした広い範囲の豪雨被害と、7月に入って季節感は夏が強まっている。多くの公立学校は、三連休明けの1週間が終わると夏休みに突入する。一方で、起債市場は夏休み感がないどころか、夏休みに入る前にしっかり起債をしておきたいという動きで賑やかである。起債市場の夏休みは、例年だと8月の第2週あたりからであり、7月は四半期頭の起債も多く見られ、華々しい展開になるところである。

相変わらず日銀の強力な金融緩和が、社債の起債条件をも支配している。代表的な一つが、3年債の募集である。この年限は、現在の国債イールドカーブではマイナス利回りに沈んでいるものの、一般債のマイナス利回りは持ちきりの投資家には不向きである。ところが、日銀の社債買入れオペに適格な起債は、0.01%や0.001%といったギリギリの低クーポン(必要な場合には、オーバーパー発行)で募集し、セカンダリーはマイナス利回りで日銀に持ち込むのである。前週の日立キャピタル3年債250億円に加え、豊田自動織機の3年債300億円も、同様の起債である。100億円単位でなく、少しまとまった額で募集されるのが特徴である。信用スプレッドを潰(つぶ)(つぶ)し、発行体の起債条件を有利にするのが目的の社債買入れであるが、既に市場のゆがみをもたらすモノでしかなくなっている。ところが、政策目標である2%の物価上昇を実現できてないために、緩和手段の縮小ができない矛盾に晒(さら)(さら)されているのである。

もう一つの金融緩和による影響が超長期債の募集である。イールドカーブを寝かせ、信用スプレッドをタイトにした結果、投資家が利回り水準を求めるためには、より年限を長期に伸ばすしかなくなったのである。前代未聞の低金利であるから、発行体側には超長期の資金ニーズが存在する。しかし、その中には、この企業に超長期の与信をして大丈夫か、投資家は十分な信用評価を行ったのか、超長期の信用評価をどのように行ったら購入判断を導き出せるのか判断さえしきれないというものも、珍しくない。この週の超長期での社債募集は、永久劣後債を除くと、京阪神ビルディングの15年債、東レの20年債、京阪ホールディングスの20年債、関西電力の20年債、東京ガスの20年・30年・40年債といった顔触れになる。

伝統的には、超長期の起債が相応しいとされる業種は、鉄道や電力・ガスといった公益企業であり、特に、料金に対して公的機関の介入があるものが安全とされて来た。しかし、近年の金融環境では、そういった状況が崩れている。投資家が利回りを求めるために、業種に関してある程度の柔軟性が高まっている。メーカーや不動産の超長期債が募集される背景には、投資家からの利回りニーズがある。だが、将来に金融環境が変化した際に、デュレーションが大きく、価格変動性の高い超長期社債は脆弱である。東日本大震災の後、東京電力の超長期債は単価を大きく下げたために、取得コストによっては減損の対象にすらなる状況となったのである。超長期債の投資家は、特に保有銘柄の発行体の信用状況変化に留意しなければならない。