国内起債市場を斬る 起債評価:3/11~3/15

2018年度の起債募集シーズンは、ほぼ終わった。翌週に募集案件があるという観測も目にしているが、大勢は15日までに終わったと考えられる。しかも、11日の週に募集されたのは、公共セクターと保険持株会社の劣後債、個人投資家向け社債に、日本航空債といった顔触れであった。

公共セクターのうち、地方公共団体金融機構は定例の10年債及び20年債の募集であり、国債対比のスプレッドはほとんど変動がない。地方公共団体の減債基金や地方公民関連の共済組合等の安定した消化先があるだけでなく、構造的に全地方公共団体の共同ファイナンスという特性もあるために、信用力の評価も高い。同年限の国債よりも、スプレッドが上乗せされていることで投資価値は低くない。また、日本高速道路保有・債務返済機構は、非定例で20年債を募集した。募集金額が84億円と中途半端な金額である。

第一生命ホールディングスの劣後債は、SPCを用いず国内市場で直接発行という形では、T&Dホールディングスやかんぽ生命に続いての募集となる。永久劣後債であるが、10年目にコール可能な形式であり、実質的に10年債という理解の投資家も多かったことだろう。非金融会社の劣後債と異なり、期限前償還を選択するためには、金融庁の了解を得る必要があるので、よほどの環境変化や監督姿勢が変わらない限り、10年経過時点での償還は確実であると想定すべきなのだろう。10年債で1.22%クーポンと考えれば、十分に高い利回りである。少子高齢化の進む日本社会において生保ビジネスに翳りがあるのは否定できないが、海外展開等積極的に進めている第一生命グループに関しては、A-(JCR)格という評価なら決して低過ぎるということもないだろう。

個人投資家向け社債を募集したのは、イオンモールである。13日から募集しているが、5年向けの0.3%クーポンである。地方や国外では圧倒的なマーケティングパワーを有するイオンであるが、国内生保以上に少子高齢化の影響を受けていくのではないか。ショッピングモール発祥とも言えるアメリカでは、既にモールの衰退が顕著になっており、イオンモールのビジネスモデルにも、明らかに限界が来ている。個人投資家向けではやや長めの5年という年限であるが、ギリギリの年限設定と見て良いだろう。0.3%クーポンは低水準と言えるが、国債や銀行預金の利回りに比べると十分に高いのである。