国内起債市場を斬る 起債評価:6/13~6/17

3月期決算企業の株主総会が近づくと、例年起債市場の動きは鈍くなる。ヘッドラインリスクの発生を怖れるのが一つの要因であろうが、今年は金融政策の変更懸念や、円安に加えて株価が上下動を繰り返していることもあって、起債環境としてはやや不安定さが感じられる。そのためもあって、無理に資金調達を急がないという発行体側の事情も十分にあるだろう。

何しろこの週は、従前の10年国債に対する指値オペに加えて、国債先物が大きく売り込まれたため、残存7年国債に対しても日銀が指値オペを初めて実行したほどの状況であった。先物が売り込まれた結果、7年と10年の国債利回りが逆転するなど、通常の自然なイールドカーブが崩れてしまったのである。イールドカーブコントロールという金融政策そのものが、市場を統制し管理下に置くというものであるから、既に自然なイールドカーブでなくなっていた可能性は高いが、通常の右肩上がりの姿を失ってしまった状態に人為的な弥縫(びほう)策(さく)を講じても、必ずしも容易に目的が達せられるとは限らない。日銀の歪んだ政策に一部のヘッジファンド等が真っ向から挑んだ形である。もっとも、国債先物取引には限月が設定されており、ローリング決済が可能とは言うものの、期近でなければ取引量に限界があり、圧倒的に日銀及び財務省側が有利である。流動性供給入札と買入オペによって、国債の個別銘柄についても需要と供給の両方をコントロールできる当局と戦って、売り方に勝ち目はないだろう。

7年から超長期年限の金利上昇を受けて、長めの年限での調達がほとんど行われなくなっている。社債等の募集を見ても、北陸電力の8年債くらいなもので、地方公共団体金融機構がFLIPに基づいて14年債と15年債を募集しているが、これは公募と言っても、特定の購入者が具体的に見えている起債であって、一般的に広く市場で購入者を募るものではない。もっとも、金融商品取引法が想定していたような一般公募は、現実の有価証券募集の局面では、なかなかお目にかかれなくなっているようであるが。プレマーケティング等の事前ヒアリングによって、社債等の販売は募集金額が変更されることも少なくなく、また、取引の透明性を確保する募集方式が一般化したこともあって、募残が発生するようなことも珍しくなっている。

結局のところ、みずほリースの4年債100億円、JERAの3年債121億円、GMOインターネットの5年債60億円、加賀電子の3年債及び5年債各50億円と、イールドカーブコントロールが有効と見られる中期年限までの小額起債が、起債銘柄のほとんどとなってしまっている。社債等のSDGs債募集が見られなかったのは、珍しく感じる。なお、月内一杯は株主総会シーズンとなるため、カレンダーが7月に変わり、市場が落ち着きを見せるまでは、社債等の募集は全般的に大人し気味になりそうだ。