国内起債市場を斬る 起債評価:1/14~1/17

成人の日の三連休明けは、いきなりの起債ラッシュである。特に、17日の金曜日は案件集中が著しい。民間企業の社債だけでも数が多いのに、財投機関債等の公共セクターが上乗せされている。1日に条件決定が10本以上あると、十分に忙しく見えるのであるが、20本を越えたのだから、ラッシュであったと評価してもおかしくないだろう。

10年国債利回りがプラスになった局面での起債となったが、全体的な利回り水準は依然として低く、超長期の起債が相次いだのは、引続き、投資家の利回りに対するニーズが高いことを示している。超長期債を募集した発行体は、民間企業から公共機関まで幅広い。20年債だけでも、川崎重工業、地方公共団体金融機構、中部電力、東京地下鉄、成田国際空港、といった顔触れである。この中で利回りをもっとも高く設定されたのは、川崎重工業債の0.7%であった。超長期債の発行体としては、メーカーは決して多くなく、また、中でもこの会社の事業展開を考えると、超長期の与信には躊躇すべきだろう。同社が消費者向けに直接販売する商品は自動二輪車のみであり、基本的にはBtoBのメーカーである。船舶、鉄道車両、航空機、産業用プラント、精密機械、ロボットといった幅広い展開の中において、自衛隊関連の防衛産業の一角でもあり、破綻処理は行われ難いと期待されるが、景気の影響を強く受けたり、海外企業との競合関係にあるジャンルも少なくない。20年先を安定的に見通すことのできない企業の20年債は、購入対象とし難いと考えるべきである。

20年債を越える年限を募集したのは、東京地下鉄の30年債及び50年債、日本高速道路保有・債務返済機構の30年債及び36年債、地方公共団体金融機構の40年債といった公共セクターである。超長期の与信対象としては、問題は少ない発行体ばかりと言えるだろう。ただし、中では、東京地下鉄の将来を考えると、新規路線の建設が再開された場合のコスト負担や都営地下鉄との合併問題など、懸念材料がないものでもなく、将来的に完全民営化されるならば、全く異なった信用力の状況となる可能性が否定できない。逆に、既に組織のあり方を見直された結果である日本高速道路保有・債務返済機構や地方公共団体金融機構については、当面の変更はないものと想定できる。株式会社形態とされなかった点も、超長期の与信には適した発行体である。

この週の起債のもう一つの特徴は、SDGs(Sustainable Development Goals)債が複数募集されたことである。東急不動産ホールディングスは5年物グリーンボンドを募集しており、JR東日本は10年物のサステイナビリティボンド、東日本高速道路は5年物・7年物・10年物のソーシャルボンドを募集している。分類上の概念は異なるものの、主に対象とするプロジェクト等の絞り方の違いであったり、発行体の事業内容の違いであったりする。近年は、これらを広い意味でSDGs債と括ることが定着しはじめており、投資家側もその認定基準・内容を確認した上で、購入意欲の表明等の取組みを行う事例が見られるようになっている。