国内起債市場を斬る 起債評価:1/12~1/15

内起債市場を斬る 起債評価:1/12~1/15

成人の日(1月11日)を含む三連休が明けて、起債市場がようやく本格的に動き出した。しかし、水曜日から木曜日になっても、条件決定にまで至る案件はわずかであった。結局のところ、金曜日に案件が集中するという展開は変わらない。年度内最後の四半期初めというタイミングもあって、早速に債券を条件決定する業態は、ノンバンク・電力・公共セクターが主になるという、ほぼ予想された展開となっている。

ノンバンクで社債を条件決定したのは、みずほリースが4年債及び7年債、オリエントコーポレーションが5年債と10年債、三菱UFJリースが6年債と個人向け7年債、クレディセゾンが5年債と20年債といった顔触れである。BBB+(R&I)格という格付けの低さから、オリエントコーポーレーションの10年債は、0.76%クーポンという高い水準が付されている。同日に募集された東日本高速道路の10年債は、0.185%クーポンと約4分の1である。一方、同日の平和不動産の10年債は、BBB(R&I)格と1ノッチほどオリエントコーポレーションより低く、クーポンは0.78%とさらに高水準になっている。東京証券取引所の家主として知られ、兜町から茅場町界隈の再開発を進める同社は、証券各社との繋がりが強く、70億円の起債を大手5証券の共同主幹事という形をとっている。クーポンの高さを取るなら、ノンバンクの中ではクレディセゾンの20年債が、0.97%クーポンと1%近い水準である。ただし、みずほフィナンシャルグループとの関係の先行きを考えると、クレディセゾンの20年後というのは、ややイメージすることが難しい。

単純にクーポンの高さだけを見ると、公共セクターの中でも、東京地下鉄の50年債が1.13%の高水準である。信用リスクを取るか、デュレーションリスクを取るか、どちらで利回りを稼ぐのかという試金石になる。それでも、50年後に東京の地下鉄網がどうなっているのか。ロンドンの地下鉄状況を見ると十分に路線は維持されているだろうが、直下型か南海トラフに起因するものかはわからないが、地震の影響が生じないとは考えられない。それでなくても補修等メンテナンスに膨大なコストを要すことは必定であり、累積欠損を解消しきれていない都営地下鉄との統合問題をいつまでも回避することは難しいだろう。東京地下鉄は、その他に20年債と30年債とを募集しており、他に、財投機関債では日本学生支援機構の2年債と、日本高速道路保有・債務返済機構が利子一括払いの24年債と34年債を募集している。準財投機関債とも言えるものでは、地方公共団体金融機構の10年債及び20年債、中日本高速道路の5年債、東日本高速道路の7年債及び10年債といった債券が募集されている。

例年であると、特定の電力会社が年初早々に起債していた記憶があるものの、今年は電源開発10年債と東京電力パワーグリッドの20年債がこの週に募集されており、いずれも必ずしも伝統的な電力債ではない。東京電力パワーグリッドは、R&Iの格付けがBBB+格とオリエントコーポレーションと同符号であり、20年債と年限を長くしたために、1.42%クーポンと東京地下鉄の50年債を上回る水準になっている。どちらが、投資対象としてより妙味あると見えるだろうか。東京電力パワーグリッドの信用力評価は、公的サポートの想定次第で大きく異なるものとなるだろう。

なお、降雪と気温低下、更には、原子力発電所の多くが稼働停止(運転中のものは調整運転を含めてわずか4基に留まる)となっているため、地域によっては電力需給が逼迫している。需要の高まりから卸電力の価格が急騰した影響が、一部の新電力会社の収支を圧迫し、さらに、一部の契約内容では個人宅にも転嫁される状況となっている。ブラックアウトの懸念もあり、必ずしも電力債を発行しているような大手発電送電会社の収支は影響されないと思われるが、電力需給に大きな異常が生じた場合には、電力関係の債券に対するヘッドラインリスクの顕在化する可能性が高い。