国内起債市場を斬る 起債評価:3/4~3/8

年度内で社債等を募集できるタイミングとしては、この週が終わるとほぼ残り1週間に絞られる。本来ならば、年度内に資金調達したい発行体と社債等を購入したい投資家とのせめぎ合う時期であるはずなのだが、金利の先高感が台頭し始めた中で、投資家はあえて購入を急がない。とは言っても、基本的に買いたい意向は強いようで、募集された社債等に対する強い需要は確認されている。金利動向の鍵となる日銀による金融政策決定会合の次回会合は3月18日と19日の開催予定であり、その結果を待っていると春分の日の休日が入ることもあって、社債等の募集可能な時期を逸してしまうことになる。外部からは金融緩和の「見直しが3月に行われる」とか「いや4月だ」とか観測が上がっているものの、当の日本銀行は直前まで姿勢を明らかにすることはない。近年メディアによるスクープで政策判断が事前にリークされている可能性もあるが、本来はブラックアウト期間が設定されているために、日銀関係者等から漏れるはずはない。

この週の社債等の募集は、株高や米国の雇用統計発表待ちで神経質な相場展開の中、決して案件が多くはならなかった。また、光通信が3年債・5年債・7年債を募集する中、3年債のみをソーシャルボンドとした他は社債等でSDGs債の募集はなく、一頃の盛り上がりと状況を異にする展開になっている。また、東京ガスの20年債と名古屋鉄道の12年債各100億円を除いて超長期債の募集はない。ガスと鉄道という業種は古くから超長期債を募集して来ており、マイナス金利解除の観測が高まっている中で、ようやく超長期セクターの発行体が以前の業態に戻りつつあるようである。引続き、鉄道、電力・ガスといった公益セクターが超長期債市場の主な発行体になるのであろう。

概ね5年債以上の社債等の募集で国債対比のスプレッドプライシングが復活しており、クーポンの絶対水準に目を向けると、投資家にとって決して1%の確保が難しくなくなっている。格付けの高い東京ガスの20年債1.647%クーポンや、名古屋鉄道の12年債1.252%クーポンという超長期年限の選択肢もあるが、短い年限でも1%の確保が可能になっているのが現在の起債市場である。三菱倉庫の10年債が国債対比+30bpsのスプレッドで1.035%クーポンとなっているが、5年債でもKPPグループホールディングスの1.167%クーポンや光通信の1.272%クーポンといった選択が可能である。これらをR&Iの格付で見ると、東京ガスがAA+格、名古屋鉄道がA格、三菱倉庫がA+格、KPPグループホールディングスがJCRのA-格、光通信がA格と決して低いと見られる水準ではない。

更に、GMOフィナンシャルホールディングスの3年債はJCRのA-格であるもののITと金融という業種特性もあって、1.7%と高いクーポンが付されている。従来はR&IのBBB+格を取得して社債を募集しており、今回JCRの格付けに切り替えたのは「格付けショッピング」であると指弾されても仕方ない。現在もR&Iの発行体格付けはBBB+格である。