国内起債市場を斬る 起債評価:10/11~10/14

下期に入っての起債シ-ズンがはじまっている。先週の四半期のはじまりに際して、まず、電力、公的機関、金融関連という辺りが動き出すのが定番であると説明したが、この週もほぼ同様の傾向が続いている。

まず、電力関連の起債では、東京電力パワーグリッドが、3年債250億円・5年債430億円・10年債220億円の三本立て計900億円を募集している。格付けがR&IのA-格及びJCRのA格とや電力関連の中で低いこともあって、3年債のクーポンが0.72%で、5年債が0.98%と1%近く、10年債に至っては1.35%と以前なら超長期債でしか見られないような高い利回り水準である。東京電力関連の信用力を格付符号より高いと評価する投資家にとっては、相当程度魅力的な水準になったと言えるだろう。また、同日に中部電力も3年債200億円を募集しているが、クーポンは0.27%と東京電力パワーグリッドと比べると随分低い水準に止まっている。JCRの格付けは同じAA格であることを考えると、格付けだけで利回りが決まるものでないことが良くわかる。なお、R&Iによる中部電力の評価はA+格である。

次に、公的セクターとしては、前週とあまり顔触れが大きく変わった感じはしない。首都高速道路が5年物ソーシャルボンド280億円を募集し、地方公共団体金融機構が10年債260億円と20年債180億円を募集している。間もなく民間企業の9月末決算の発表シーズンが来ることもあって、今後はやや公的セクターの目立つ展開になることが予想される。

大きく前週と異なるのが、金融関連の動きである。電力や公的セクターより少し動きが遅いものの、メーカー等は更に遅れて来るのだろう。銀行関連では、あおぞら銀行が3年債100億円、みずほフィナンシャルグループが劣後債を10年債と5年期限前償還債計1,030億円を個人向けに募集し、5年期限前償還債285億円を機関投資家向けに募集している。山口フィナンシャルグループは5年期限前償還の劣後グリーンボンドを個人向け200億及び機関投資家向け24億円の計224億円を条件決定している。その他にノンバンクとして、トヨタファイナンスが3年債400億円及び5年債200億円を募集した他、三井住友トラストパナソニックファイナンスが5年グリーンボンド92億円を募集している。

これら以外には、ヒューリックが2種の劣後債を募集しているだけであり、社債等発行体の顔触れは業種という観点では、あまり広がりが見られていない。なお、この週の顕著な特徴として、超長期債の募集が見られなくなっていることに着目しておきたい。日銀のイールドカーブコントロール対象外の年限ということで金利水準の上昇が意識されており、地方公共団体金融機構による20年債の募集が唯一である。劣後債も、ヒューリックの劣後グリーンボンドは期限前償還されなければ35年や40年後に償還されるかもしれないが、銀行持株会社の劣後債はいずれも最終償還が10年のみである。前週には電力や鉄道などで超長期債の募集があったのに比べると、超長期債の不在が目立つ展開の週であった。